新型コロナウイルスの緊急事態宣言などが9月末に全面解除となり、経済活動は再び拡大する。制限されてきた飲食や宿泊といったサービス消費が増え、来年初めには感染拡大前の水準に戻るとの民間予測もある。着実に進むワクチン接種が回復を後押しすると見込むが、変異株による再流行懸念も残る。 (3面参照) みずほリサーチ&テクノロジーズの服部直樹上席主任エコノミストは、高齢者や現役世代のワクチン接種率が今年11月ごろまでに8割に達するとの前提で、2022年1~3月のサービス消費が19年の水準にほぼ達するとの見通しを示した。
徐々に人出が増加することで夏には再び感染拡大が起きるとしたが、ワクチンの3回目接種や接種済証の活用などが進めば「緊急事態宣言の再発令を回避し、消費の急落は避けられる」(服部氏)と想定した。
大和総研の神田慶司シニアエコノミストも、サービス消費は21年10~12月以降に活発になるとみる。「『Go To キャンペーン』が本格化した20年10~12月を上回る水準にまで回復し、その後も着実に消費が拡大していく」と説明した。
ただ両氏ともに「少なくとも22年は新型コロナの影響が続き、経済回復に不確実さは残る」と指摘した。新たな変異株の出現による感染状況の悪化が最大のリスク要因で、消費に再びブレーキがかかる事態も起こり得るという。
■客回復に期待の声
新型コロナウイルスの緊急事態宣言などが今月末で解除されることが28日に決まり、厳しい経営環境が続く飲食業や観光業などからは、利用客の回復につながることに期待の声が上がった。飲食店や百貨店などの店舗では、「密」を避けるための感染対策を継続する。
外食大手のワタミは、居酒屋チェーン約300店のうち250店ほどを休業していた。感染防止策を取りながら、順次再開していく方針だ。担当者は「客足が元に戻るかどうかはまだ分からないが、休業店が再開するのは大きな話でうれしい」と期待を口にした。ビールメーカーの関係者は「宣言明けを見越し、先週ごろから飲食店向けの注文が増えた」と話した。
小売業界でも感染防止策を続ける。三越伊勢丹ホールディングスは、店舗のフロアごとに混雑状況を把握するシステムを残し、混雑時に入場制限できるよう態勢を維持する。
秋冬の観光シーズンを迎える業界では、需要を掘り起こすために工夫を凝らす。旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)は10月以降、ワクチン接種者や、抗原検査で陰性が確認された人向けの割引ツアーの募集枠を拡大する。全日本空輸はワクチンを接種した利用客への特典付与を検討している。