新型コロナウイルス感染症の影響で飲食店が打撃を受ける中、山陰両県で新しい店が次々にオープンしている。いずれも素材にこだわった「心身にやさしい」商品を提供している。どんなこだわりや思いがあるのか。店を訪ねてみた。
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30分前から行列ができ、約1時間で完売する「天然酵母のハードパンコタメリ」。店主の栗原なぎささんは、自家製天然酵母にこだわり、製造から販売まで一人で切り盛りしている。
今年3月に大阪からUターン。大好きな天然酵母パンを趣味で作り始め、画像共有アプリ「インスタグラム」に投稿するとフォロワー数が急増。店を持ち、多くの人に食べてもらいたいという思いが強まった。
ただ、夫は兵庫で単身赴任中。2人の小学生の子どもを育てながらの開店に不安がよぎるも、覚悟を決めた。独学で発酵の勉強を続けながら自宅を改装し、5月に店をオープンした。
天然酵母はすべて自家製だ。ホップ種や粉と水でつくるルヴァン種などの定番から、イチゴなど季節のフルーツ酵母も用意する。
酵母菌を乾燥させたドライイーストは3~4時間の発酵で焼けるが、天然酵母のパンは常温発酵で7~8時間かかる。コタメリのパンはうまみを増やすため、さらに低温でゆっくり発酵させ、12時間以上をかける。
営業日の前日は午後4時に寝て午後9時に起き、徹夜で約20種類のパンを一人で焼く。おすすめのパンは、水分量が多い高加水のハードパン「ロデヴ」。外はカリカリ、中はもちっとした食感が特徴で、通常のロデヴは粉に対し80~90%の水分量だが、コタメリでは110%の水分量を用いるため、よりもっちりとした生地を楽しめる。
それにしても、わずか2カ月で夢を実現させた栗原さんの行動力には驚かされた。2畳ほどの店内にはおいしそうなパンが並ぶ。自分のペースで大好きなパンを作り、喜んでもらえているという充実感が、おいしさの理由なのだと思った。
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この企画は、本紙は情報部・坂上晴香、SデジではSデジ編集部・宍道香穂の「はるかほ」コンビで週1回、お届けします。
コタメリ
出雲市里方町941-30
営業は水・土曜日のみ。開店は午前11時で、売り切れ次第終了する。