秋晴れとなった過日、思い立って近くの朝日山(松江市鹿島町、344メートル)に登った。島根半島の中央部に位置し、出雲国風土記に神名火山(かんなびやま)と記される由緒ある山。地元では「あさえさん」と親しまれる▼登山道の始まりは「なぜこんな所に?」と思わせる立派な石段だ。500段余り。合併前の鹿島町が、頂にある朝日寺の参道として20年ほど前に整えた。当時の記事によると1500段を目指す大事業。旧町の豊かな財政状況を伝える建造物の一つだろう▼幼い子を連れて登って以来十数年ぶりの山行は、この石段で足が棒になり、苦行となったが、1時間もかからずたどり着いた山頂の眺めに疲れを忘れた。南に宍道湖、さらに大山や三瓶山を望む。北に広がる日本海には隠岐の島々がかすむ▼見下ろすと鹿島の集落。その向こうに島根原発がある。施設建物は小山に隠れて見えないが、集落との近さを改めて感じる。再稼働の可否に関わる議論の中で避難計画の実効性が問われている。避難計画が実効性を持つ事態が起こりうることを考えないといけない現実がある。もしそうなったら、その後のこの地はどうなるのだろう▼そんな思いを抱きつつ、登りと違う道から宍道湖側の麓に下りた。山腹を貫き昨年11月に開通した古浦西長江トンネルを歩き、日本海側に戻って帰宅した。原発事故の際の避難経路として造られた道路とトンネルである。(輔)