新型コロナウイルスの流行「第6波」を想定し、今夏の第5波ピーク時より入院患者受け入れ2割増を掲げた国の医療強化方針に関し、都道府県ごとに試算したところ、全国で計約3万4千人の受け入れに備える必要があることが24日、分かった。入院対象は約5700人増え、現状のままでは東京、大阪など16都府県で病床が不足する恐れがある。都道府県は国の方針に沿って11月末までに計画を見直すが、病床数を上積みするには医療人材確保や一般医療との両立が課題となる。
山陰両県では、第5波で最多だった入院対象者数が島根189人、鳥取179人。第5波の最大確保病床数は島根324床、鳥取337床で、第6波で想定される入院対象者数の島根227人、鳥取215人と比べると、試算上は病床数は足りる。ただ、第5波当時、一部の医療機関では診察の予約や手術を延期してコロナ患者に対応するなど、医療人材不足は明らかで、第6波の対応がスムーズにできるかどうかは不透明だ。
第5波では病床が逼迫(ひっぱく)し、自宅療養中に患者の症状が悪化して亡くなるケースが相次いだ。こうした反省を踏まえ、政府は今月15日の対策本部で新型コロナ対策の骨格を提示。第5波ピークの2割増の入院患者受け入れ体制をつくるとした。
共同通信は厚生労働省の公表データを基に、第5波の7~9月で「入院者」と「入院先調整中」の合計が最も多かった時点の人数を都道府県ごとに算出。一律に2割増えると想定すると、第6波の入院対象は東京が5432人と最多で、大阪2764人、兵庫2040人、神奈川2038人が続いた。全国では計3万4153人で、第5波より5707人多かった。
第6波で想定される入院対象人数より第5波の最大確保病床数が少なかったのは栃木、兵庫、和歌山、香川、熊本、沖縄の6県。合わせて1962床が不足し、兵庫は683床、香川は498床が足りなくなる計算だ。
医療機関は自宅療養者らの症状急変に備え、あらかじめ病床数に余裕を持たせておく必要がある。東京、神奈川、大阪、福岡など10都府県は第5波の最大確保病床数が第6波の入院対象人数を上回っているものの、厚労省の目安を参考に確保病床数の8割で入院患者に対応しようとする場合、病床が足りなくなるため上積みが必要だ。厚労省は感染拡大時の病床使用率について「8割以上」を目安としている。
ただ実際の入院患者数の想定は地域の実情に応じ都道府県が行うため、16都府県以外にも確保病床の上積みが必要となる可能性がある。