自民党の故竹下亘氏の後継として立候補した党新人の高見康裕氏が、圧倒的な票差で初陣を飾った。当選確実の一報が届いたのは午後8時すぎ。約350人が詰めかけた出雲市内の報告会場に姿を見せると「県民と一丸となって、新しい時代のふるさと創生を前に進めていく」と喜びをかみしめた。
島根県議会の最大会派・自民党議員連盟の所属県議だった高見氏の国政への挑戦は急転直下で決まった。7期21年間、議席を守ってきた竹下氏が7月、食道がんを理由に政界引退を表明。党県連による公募で8月に後継候補に決まった。
党組織が全面的に支え、陣営は「圧勝」を目標に掲げたものの、多くの難題に直面した。
しこりを抱えたまま選挙戦に突入せざるを得なかった。党県連の公募には県議2人が名乗りを上げ、党県連は保守分裂で混乱した2019年知事選を踏まえ、地域支部の意見を聴取。最後は、国会議員を含む選挙対策委員会が全会一致で高見氏に軍配を上げたが、もう一方の県議を推した党出雲支部内に不満が残った。
その影響で、大票田の出雲市では公示後、動員をかけても街頭に思ったように聴衆が集まらず、陣営には動揺が広がった。
選挙日程が当初の見立てより早まり、異例の短期決戦となったことも誤算だった。あいさつ回りが十分にできず、最後まで「知名度ゼロ」「時間がない」などと危機感を前面に訴えた。
人口減少が進む選挙区内では、農林水産業の担い手確保や、防災インフラの整備、地域交通網の維持など先送りの許されない課題が山積する。
竹下氏と最後に言葉を交わしたのは8月中旬。亡くなる約1カ月前に東京都内の自宅に招かれ「『ふるさと創生』を心のど真ん中に置いて頑張ってくれ」と声を掛けられた。
バトンを引き継ぎ、背負う責任は重いだけに「地方の厳しい実情と切実な声を国に届け、政策に反映させる」と強調。人口減少対策、子育て環境の充実、産業振興などに全力を挙げる考えを示した。 (松本直也) 31日に投開票された衆院選で、島根1区は自民党前職の細田博之氏(77)が11選を決め、2区は同党新人の高見康裕氏(41)が初当選を果たした。2区は高見氏が7期務めた故竹下亘氏の後継として立候補し、厚い保守地盤に支えられて議席を引き継いだ。1区は立憲民主党前職の亀井亜紀子氏(56)が今回も及ばず、無所属新人も落選。2区は立民新人の山本誉氏(64)、共産党新人の向瀬慎一氏(50)が敗れた。亀井亜、山本両氏は、重複立候補した比例中国ブロック(定数11)での復活当選もかなわなかった。