法話する瀬戸内寂聴さん=2018年6月
法話する瀬戸内寂聴さん=2018年6月
2004年11月に鳥取県を訪れ、講演で「三徳山に奇縁を感じる」と話す瀬戸内寂聴さん
2004年11月に鳥取県を訪れ、講演で「三徳山に奇縁を感じる」と話す瀬戸内寂聴さん
店内に設けられた瀬戸内寂聴さんの追悼コーナー=松江市田和山町、今井書店グループセンター店
店内に設けられた瀬戸内寂聴さんの追悼コーナー=松江市田和山町、今井書店グループセンター店
法話する瀬戸内寂聴さん=2018年6月
2004年11月に鳥取県を訪れ、講演で「三徳山に奇縁を感じる」と話す瀬戸内寂聴さん
店内に設けられた瀬戸内寂聴さんの追悼コーナー=松江市田和山町、今井書店グループセンター店

 文学から恋愛、仏道へと身を寄せながら、しなやかに生きた瀬戸内寂聴さんの訃報が届いた11日、在りし日の姿を知る島根県内の関係者が人柄をしのんだ。

 作家と編集者の間柄で親交があった元文藝春秋の高橋一清さん(77)=益田市出身、『湖都松江』編集長=は54年前に寂聴さんと出会い、「万年筆で流れるように細く、きれいな字を書く作家だった」と振り返る。

 色恋が絶えなかったことで知られる寂聴さんが51歳で出家後、「高橋さん、こんな頭になっちゃった。おかしい?」と言われた姿を見て、心身が自由になった印象を受けたという。

 波瀾(はらん)万丈の過去をさらけ出し、説く法話に共感が広がった。高橋さんは「誰でもたたけばほこりが舞うもの。救われた人は多いのではないか」と話した。

 天台宗の清水寺(安来市清水町)の清水谷善圭貫首(74)は約10年前、僧位親授式で寂聴さんと昼食を共にし「気さくで親しみやすい人だった」と当時を思い出す。晩年、訴え続けた反戦への願いが印象に残っているとし「大事なことを発信された」と敬意を表した。

 松江市田和山町の今井書店グループセンター店では訃報を受け、特設コーナーが設けられた。来店客が小説やエッセーを手に取って読み、人の心に寄り添い続けた言葉をあらためて胸に刻んだ。

 性愛を赤裸々に描いた小説『花芯』や現代語で訳した『源氏物語』のほか、10月に刊行された『美しいお経』など約40点が並んだ。藤本美保店長(46)は「豊富な経験をされたからこそ言葉一つ一つに重みがあり、人々の心に響いたと思う。作品は今後も多くの人に求められるだろう」と話した。
(多賀芳文、大迫由佳理)