政府は新型コロナウイルス禍からの回復を目指した、財政支出が過去最大の55兆7千億円に上る経済対策を決定した。感染減により景気が上向く中で焦点の明確化が課題だったが、対策は子どもへの10万円給付から賃上げの税制支援や10兆円の大学ファンドまで、雑多な政策の寄せ集めとなった。焦点のぼやけた「ばらまき型」の対策で効果には疑問符が付く。

 政府は財源確保のため31兆円超の2021年度補正予算案を策定する。22年度予算案の編成と合わせて、国債の発行をどの程度抑えられるか、岸田文雄首相の財政健全化への姿勢が問われる。

 対策の狙いの一つがコロナ禍における困窮者・事業者への支援だ。住民税非課税世帯や経済的困難に直面する学生らを対象に10万円を給付するほか、売り上げが大きく減った中小企業などに最大250万円を配る。

 コロナ禍は飲食業などで働く非正規労働者やアルバイトの学生の収入を直撃した。今回の給付はその支援策として評価できるが、本来はもっと早く手を打つべきだった。

 事業者支援を巡っては持続化給付金で多数の不正受給が出た。今回の給付は要件が一部緩和されており、不正防止に万全を期さねばならない。

 企業や家計の負担減へガソリン高抑制の補助金も盛り込まれたが、小売値が下がる保証はなく生煮えな施策と言えよう。

 一方、対策の目玉となった18歳以下の子どもへの10万円給付は、狙いも対象もあいまいだ。所得制限を設けたものの18歳以下の約9割が対象となり、余裕のある世帯の子どもが含まれる。半分の5万円を現金給付としたことで、消費でなく貯蓄へ回る可能性も高い。

 共同通信の世論調査で今回の給付を「適切」とした回答は19・3%にとどまり、「所得制限を引き下げ対象を絞るべきだ」が34・7%に達した。政府は今からでも再考すべきだ。

 対策のもう一つの狙いは岸田首相の掲げる「成長と分配の好循環」であり、成長戦略として科学技術立国のための10兆円大学ファンドの年度内実現などを明示した。

 10兆円の資金を海外株式などへ投資し、運用益を大学の研究支援に充てる構想だが、成果には長い時間を要する。その間に運用で損失を出す恐れがあり、国民に対する透明性と責任の明確化を忘れないでもらいたい。

 首相が力を入れる分配政策では看護や介護、保育士の収入引き上げを明記。来月本格化する22年度の税制改正で賃上げ支援の税制も強化する方針だ。同税制は既にあるが、効果は限定的で、その手直しには多くを期待できない。赤字が多い中小企業の賃上げも支援する方針だが、給与引き上げはコスト増になるため実施企業は限られよう。

 いずれも分配強化に対する岸田首相の真剣度を疑わせる乏しい内容と言わざるを得ず、残念だ。

 日本で賃金が上がらない要因に労働組合の組織率が低く対企業の交渉力が弱い点と、賃金の低い非正規雇用の増大が指摘される。同様の問題を抱える米国ではバイデン政権と与党民主党が労組強化を明確にし、支援の法整備が模索されている。

 岸田首相も「新しい資本主義」「新自由主義からの転換」を強調するならば、従来の発想を超えた骨太な具体策を打ち出すべきだ。