約20年ぶりに現職不在の戦いとなる松江市長選(11日告示、18日投開票)が1週間後に迫った。ともに無所属新人の上定昭仁氏と出川桃子氏、共産党新人の吉儀敬子氏が立候補を表明。2013年以来の三つどもえの戦いとなりそうだ。 (片山大輔、佐々木一全、中村成美)
昨年末にいち早く出馬表明した上定氏は、産学官金連携の強化による経済の活性化などを主張。自民党島根県連、公明党本部、国民民主党県連、連合島根など約130団体の推薦を得た。新型コロナウイルス対策やまちづくりなど12項目を盛り込んだ政策集を作り、知名度の向上とともに訴えの浸透を図る。
課題は組織固めと女性票の獲得。一部の推薦団体で割り当てたリーフレットが配られておらず、陣営は上滑りを警戒して各団体の引き締めに力を入れる。唯一の男性の立候補予定者で、3日には女性を対象にした集会を開くなど、女性票の掘り起こしも意識する。
1月中旬に表明した出川氏は、市役所本庁舎の建て替え事業の見直しを公約に掲げ、支援者の人脈を生かして支持の輪を広げる活動を展開。平日朝に街頭に立ち、10人前後のミニ集会を小まめに重ねる。会員制交流サイト(SNS)や街宣車を使い、女性リーダーの誕生や庁舎問題で浮き彫りになったと指摘する閉鎖的な市政の転換を訴える。
あいさつ回りに応じる企業・団体が限られるため、陣営は活動量を増やして補う考え。過去2回の市長選に立候補し、現職に1万票余りの差まで迫った自民党の川上大県議(松江選挙区)が3月下旬に選対本部長に就き、戦略を練る。
吉儀氏は全国で唯一、県庁所在地に立地する中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町片句)の再稼働反対を旗印に、3月中旬に表明した。原子力規制委員会の審査が終盤を迎える中、擁立した共産党県委員会が市議選の立候補予定者3人とセットで、集会の開催や政策集の配布を進める。
原発再稼働に慎重な民意の受け皿を目指すが、立憲民主党の県議は上定氏、市民団体の一部幹部は出川氏を支持するなど、広がりに欠く。通算33年の旧東出雲町議と松江市議の経験をアピールしながら、コロナ禍で困窮する市民や事業者への支援を掲げ、反原発票以外の取り込みも模索する。
◇立候補予定者(表明順、敬称略)
上定 昭仁 | 48歳 | 元日本政策投資銀行松江事務所長
出川 桃子 | 43歳 | 元松江市議
吉儀 敬子 | 70歳 | 元松江市議