【ジュネーブ、ワシントン共同】世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの新変異株を「オミクロン株」と命名し、「懸念される変異株」に指定してから26日で1カ月。デルタ株に比べて重症化リスクが低いとの調査結果が相次いでいるが、欧米を中心に感染が深刻化しておりWHOは楽観論を戒める。日本では大阪、東京などの大都市圏で市中感染が確認され、警戒感が強まった。
オミクロン株の特徴は感染力の強さで、WHOは市中感染が広がれば1日半から3日の短期間で感染者数が2倍になると推計している。米国ではオミクロン株の国内初確認から2週間ほどで全体の7割を超えた。
英国、フランス、イタリアでは24日発表の1日当たりの新規感染者数が過去最多を更新した。
日本での初確認は11月30日、アフリカ南部ナミビアの男性外交官だった。今月24日までの感染者は計226人。22日には大阪で日本初となる市中感染が確認された。
南アフリカの国立伝染病研究所などのチームは21日、重症化リスクはデルタ株より70%低いとの分析を公表した。英保健当局も23日、入院リスクが50~70%低いとの調査結果を発表した。英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンやエディンバラ大の研究チームも同様の報告を出している。
ただ、いずれも暫定的な分析結果だ。WHOのスワミナサン首席科学者は、リスクが低いと結論付けて油断するのは「浅はかだ」と戒める。感染者が爆発的に増えて医療体制が逼迫(ひっぱく)すれば、十分な治療ができず、死者が増えるという悪循環に陥るためだ。
「重症化しにくいウイルスが広がって免疫が得られれば、世界的流行は終息に向かう」との楽観論も漂うが、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「何度も私たちをだましてきたウイルスを相手に、そんなことは期待しないほうがいい」と一蹴した。
WHOはワクチンだけでは感染拡大は防げないと強調。手指消毒や3密(密閉、密集、密接)の回避といった基本対策徹底を改めて訴えている。