2022年の世界は核軍縮が焦点だ。二つの重要な国際会議を控え、人類は核軍拡競争を止め、核兵器廃絶へ踏み出せるかどうかの岐路にある。
米中ロ英仏の核保有五大国首脳は、核戦争の回避と核軍縮推進を掲げた初の共同声明を年明けに発表した。問題は声明の言葉をどう実行に移すかだ。具体的な行動を取るよう求めたい。
地球温暖化が各地で引き起こす気候危機、3年目に入った新型コロナウイルス禍による苦難と貧困、紛争や人道危機への対処といった課題でも国際社会が結束できるか問われる年になるだろう。
核を巡る会議は1月開催が急きょ延期された核拡散防止条約(NPT)再検討会議と、3月に予定される核兵器禁止条約の第1回締約国会議だ。
NPTは核保有を五大国に限って軍縮交渉を誠実に進めるよう義務付け、他国の核保有は禁ずる条約だ。進み具合を検証する5年に1度の再検討会議は、新型コロナの影響で昨年春から2回にわたって延期となった。
五大国が再検討会議に向けて準備し、発表した声明は「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない」と述べ、軍縮交渉義務を守ると約束した。米中、米ロがそれぞれ台湾とウクライナの情勢を巡って厳しく対立する中で、核軍縮交渉を進めると表明したこと自体は評価したい。それが今後の外交努力の土台になるなら歓迎だ。
だが実際には核戦力の強化や、核使用のハードルを下げる小型核、従来のミサイル防衛で対応できない極超音速兵器の開発競争などが激化している。それを変えない限り声明は批判をかわす狙いの空虚な言葉と受け取られても仕方ないだろう。
五大国の核軍縮と並ぶNPTのもう一つの柱は、今や穴だらけの核不拡散体制だ。立て直しは容易でないが、取り組まなければならない。未加盟の核保有国で宿敵同士のインドとパキスタンはにらみ合いを続けている。米国は北朝鮮に、朝鮮半島の非核化へ向けた無条件対話を呼び掛けているが、北朝鮮は応じていない。イラン核合意の修復を図る米国とイランの間接協議も難航している。
核軍縮を前に進めようとする非核保有国や市民の努力が実を結び、核兵器を包括的に禁ずる核兵器禁止条約が昨年発効した。しかし核保有国と、米国の「核の傘」に依存する日本などは、同条約に背を向けている。唯一の戦争被爆国で、核保有国と非核保有国の「橋渡し」役を自任する日本は、第1回締約国会議へのオブザーバー参加に踏み切るべきだ。
地球温暖化対策で各国は今年末までに、30年の温室効果ガス排出削減目標を高める宿題を負う。対策の強化を求める若者らの声に応えてほしい。
新型コロナ対策では世界保健機関(WHO)などが進める発展途上国へのワクチンの公平な供給を加速することが重要だ。全世界へのワクチン普及に手間取れば、オミクロン株のように新たな脅威となる変異株出現の恐れも強まるからだ。
感染症にもっと有効に対応する新たな国際制度の創設を目指し、WHO加盟国が今年始める交渉の行方も注視したい。
地球規模の課題の解決には経済、社会の在り方を根本から問い直す必要がある。世界を覆う紛争や民主主義の後退、格差拡大を克服するため人類の英知を結集すべきだ。