冷えによる不調について説明する奈良井康宏麻酔科医長。痛みの治療を行うペインクリニックの専門医でもある
冷えによる不調について説明する奈良井康宏麻酔科医長。痛みの治療を行うペインクリニックの専門医でもある

 冬になり気温が低くなると気になるのが、体の冷え。冷え性の人は「冬になると手足の冷えに耐えられない」「夜、体がなかなか温まらず、寝付けない」と悩む人が多い。だるさや手足のむくみなど、冷えが原因の不調を抱える人もいる。つらい冷えや不調を予防し、改善するにはどうすれば良いのか。島根県立中央病院(出雲市姫原4丁目)でさまざまな痛みの治療を行う奈良井康宏(やすひろ)麻酔科医長に話を聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

島根県立中央病院(出雲市姫原4丁目)


▷神経痛や頭痛、胃腸痛、むくみなどの症状
 体が冷えると、具体的にどのような不調が現れるのか。痛みの治療を専門にする奈良井先生は「寒くなると、座骨神経痛など神経系の痛みが強くなる人が増えます」と話す。ほかにも、胃腸の不調や頭痛、食欲不振、手足のむくみを訴える人も多い。過去に大きなけがをした部分が痛む人もいる。

 冬に神経系の痛みが出やすくなることについて、奈良井先生は「寒くなり、神経の働きが過敏になることが影響しているのでは」と推測する。加えて「おなかは体の中で最も血流が多い場所。腹部が冷えると体を巡る血液が冷えて血流が悪くなり、むくみや体のだるさといった不調につながりやすいです」とし、体を冷やさないようにすることは、不調の予防や改善に効果的と説明した。

 注意点として、「体の痛みの原因はさまざまで、必ずしも温めるのが良いとは限りません。打ちみやぎっくり腰といった炎症系の痛みは、患部を冷やす方が効果的です」と指摘する。「症状を和らげるために体を温めるべきか、冷やすべきか、分からない場合は医師の診断を元に判断してください」とした上で、冷えによる不調への対策を教えてくれた。

島根県立中央病院の奈良井康宏麻酔科医長

▷体の表面だけでなく、内側も温める
 冷えを改善するためには、体の表面だけでなく、内側も温める必要がある。表面の防寒は手首、足首、首を中心に暖かい衣類で冷たい外気から体を守るのが効果的とのこと。

 体の内側を温めることも大切。「手軽に内部体温を温めるには、湯船につかるのがお薦めです」(奈良井先生)。自身も冷え性気味という奈良井先生は「忙しい時などはシャワーで済ませることがありますが、やはりシャワーだけでは、体の内側まで温めるのは難しいと感じます」と話す。毎日、湯船にお湯をためるのが難しい人は、足湯につかるだけでも効果があるという。奈良井先生は「高齢の方や持病がある方は、かかりつけ医に相談してから、無理のない範囲で入浴してください」と注意点を挙げた。

 ポイントは、ややぬるいと感じる温度のお湯に、ゆっくりとつかること。適切な温度や時間は個人により異なるため、体が温まるか、のぼせないかをチェックしながら、自分にとって適切な温度、時間を把握したい。

 

 もう一つのポイントは、食べ物や飲み物。冷たいものは体を冷やし、温かいものは体を温めるため、冷蔵庫から出した冷たい食材や飲み物は、そのままではなく、温めるか、常温で口にすると良い。冷たいジュースをよく飲む人やアイスクリームが大好きな人は、知らず知らずのうちに、体の内部が冷えている可能性がある。

 奈良井先生は「食べ物や飲み物は人によって好みがあるため、無理のない範囲で心掛けてもらえたら」とした上で、「今の時期なら鍋料理や温かいスープ、ホットミルクなどがお薦め」とした。野菜はサラダなど冷たい状態で食べるよりも、温野菜にしたり、焼き野菜にしたりと、温かい状態で食べると良さそうだ。

 

▷ストレッチも効果的
 体を内側から温めることに加え、ストレッチや体操で、凝り固まった体をほぐすのも大切という。肩や背中、腰のこりがつらい人は、首や肩、肩甲骨を動かしたり、背中を伸ばしたりすると、筋肉がほぐれるほか、血流が良くなり、改善につながる。

 奈良井先生は「朝、起きた直後や寒くて体が固まっている時などに急にストレッチをすると、かえって体を痛めやすいため、注意が必要です」とし、「入浴後など、体がほぐれているタイミングで動かすのがお薦めです」とアドバイスした。

▷中央病院での痛みの治療法
 奈良井先生は島根県立中央病院の麻酔科で手術麻酔や緩和ケアに携わる。体の痛みを診察し、治療するペインクリニックの専門医でもあり、症状の緩和に向けた生活改善のアドバイスや薬の処方、さらに注射で自律神経の働きをコントロールする「神経ブロック」といった治療を行っている。例えば、交感神経が優位になって血管が収縮し、血流が悪くなっている時、神経ブロックで副交感神経を優位にして血管を拡張させ、血流を良くすると痛みが和らぐ場合があるとのこと。

 体を温めることで症状がよくなる場合も多く、生活改善に向けたアドバイスに加え、ショウガや朝鮮ニンジンなど体を温める成分が含まれた漢方を処方することもある。

 奈良井先生は「体を冷やさない生活習慣を身につけることは、冷えによる不調を改善するための土台となります」と強調した。日頃の生活で「冷え取り」を意識することは、不調の改善だけでなく、予防にもつながる。今回教えてもらったポイントを忘れず、日々の生活に取り入れていこうと思った。