さまざまな角度がついた、ボルダリング用の壁=出雲市姫原2丁目、クライミングパークHOME
さまざまな角度がついた、ボルダリング用の壁=出雲市姫原2丁目、クライミングパークHOME

 1月半ばになって気になってくるのが、正月太り。おいしいものをたくさん食べ、ゆったりと過ごし、ふと「おなか周りや二の腕に肉がついてきた…」と気付く。寒くなってから運動不足を実感している人も多いだろう。手軽にできるランニングや筋トレも魅力的だが、何か新しいスポーツを始めてみたい! と考えている人の参考になればと「スポーツクライミング」の一種、ボルダリングを体験してきた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 

 スポーツクライミングは2021年の東京五輪で公式種目に採用された。山陰両県にも練習できる室内施設が増えている。やって来たのは出雲市姫原2丁目のボルダリングジム「クライミングパークHOME(ホーム)」。2017年に出雲市斐川町求院にオープンし、2019年に現在の場所へ移転した。美容室のような爽やかでおしゃれな外観に、本当にここがジムなのだろうか…と不安になりつつ、扉を開けた。

ボルダリングジム「クライミングパークHOME」=出雲市姫原2丁目

 受付がある2階で、オーナーの金﨑陽祐(ようすけ)さん(44)が出迎えてくれた。コの字の壁が横に二つ並んだような構造で、3.5~4.0メートルの6面を登ることができる。加えて1階には上級者向けに、難易度の高い2面が設置されている。

▷明るい音楽、和気あいあいの雰囲気
 ジム内には明るい音楽が流れ、利用者同士が和気あいあいと会話を楽しんでいた。金﨑さんによると、利用者同士が自然と仲良くなり、会話を交わしながらボルダリングを楽しんでいるとのこと。「もちろん、1人で黙々と壁を登っている人もいて、利用者さんそれぞれが自由に楽しんでいます」との言葉に、過ごしやすそうな雰囲気を感じた。

オーナーの金﨑陽祐(ようすけ)さん

 初めてボルダリングに挑戦する利用者も、休憩を挟みながら1時間以上は滞在することが多いという。ゴールする達成感を味わえるほか、スタッフが登り方をアドバイスしたり、利用者同士でこつを教え合ったりすることで、飽きることなく楽しめるのだろう。1人で黙々と運動するのが退屈で続かない… という人に薦めたいスポーツだと感じた。

 利用者は20~30代が多く、小・中学生や未就学児も訪れる。金﨑さんは「運動不足で体を動かしたいと考える人が増えていると同時に、スポーツの中から選択肢としてクライミングを視野に入れる人が多くなっているように思います」と話し、若い世代を中心に、クライミングが身近なスポーツになっていることを感じた。東京五輪で採用され、10代や20代の選手がテレビや雑誌などで紹介され、注目を集めた影響もあるのだろう。

▷8級から初段まで100種類以上のコース
 ジム内を見渡すと、さまざまな傾斜の壁を埋め尽くすように、「ホールド」と呼ばれるカラフルな取っ手が付いている。コースごとに使用できるホールドが決まっていて、ホールドの色や、それぞれのホールドの横に貼られたマスキングテープの色が目印。クライミングパークHOMEでは100種類以上のコースを用意し、難易度の低い順に、8級から初段までの9レベルに分けている。

地面に対し垂直に設置された壁は、体にかかる負荷が小さく、初心者にお薦め

 スタートとゴールのホールドには、V字型にテープが張ってある。ホールドを両手で持ち、足はホールドに載せるか宙に浮かせ、両足が地面から離れた状態でスタートする。使うホールドさえ守れば、右手、左手、右足、左足、どれを乗せても構わない。

▷初心者向けのコースに挑戦
 登る際は股関節と肩甲骨をよく使うとのこと。念入りにストレッチをして、いざ挑戦。まずは一番簡単な8級のコース(高さ4メートル)。金﨑さんの指示を頼りに、紫色のホールドだけを使い、ゴールを目指す。
 ほかの人たちは軽々と登っているように見えたが、実際に登ってみるとかなり大変だ。「あんなに遠くのホールド、つかめるのかな…」「バランスをとるのが難しい!」と苦戦が続いた。

 なんとかゴールのホールドを両手でつかむと、背後から「ナイスー!」と声が飛び交った。壁から降りると、金﨑さんやほかの利用者さんたちが、こぶしをこちらに突き出している。「ゴールした人はみんなとグータッチします」と金﨑さん。アットホームな雰囲気に和みながら、順にグータッチをした。褒められた気がして、うれしい!

 グータッチはこのジム特有のコミュニケーションかと思いきや、公式戦でも行われるとのこと。知らなかった。登っている人に「ガンバ!」と声援を送るのも、クライミングならではの応援方法だ。

 登り終えて達成感に浸っていたのもつかの間、「どんどんいきましょう」と7級のコース(高さ4メートル)に案内された。8級のコースよりも、使うホールドの順番や、つかむ手の向きに工夫が必要だ。落ちないように足や手に力を込め続けるのは厳しい。思わず「きつい!」と声が出る。もう無理だ…と諦めそうになったが、背後から聞こえる「ガンバ!」の声に励まされ、なんとかゴールできた。

使うホールドを指示してもらいながら挑戦

 さらに6級のコース(高さ4メートル)にも挑戦したが、壁に角度がついていたり、ホールドが小さかったり。スタート地点ですでに、足場も手元も不安定になり、7級のコースよりはるかに難易度が高いと感じた。体勢を維持するのが難しく、登り始める前に落下してしまった。登りながら次の動きを考え、安定した体制をキープする難しさを感じた。

 手でホールドをつかみ、体を持ち上げるイメージから、腕や手の力が重要なスポーツだと思っていたが、実際にやってみると、足腰や腹筋、背筋、指先といった全身の力を使うのだと分かった。

 金﨑さんは「腕力、握力の有無よりも、全身をうまく使うことが大切です」と、登る時のポイントを説明した。どんな姿勢を取るかによって、体にかかる負荷の大小が変わるという。地面に対して垂直に立つ壁と比べ、角度がついた壁は体にかかる負荷が大きく、腕だけで体重を支えるのは難しい。いかに負担の少ない態勢をとるかがポイントになる。

さまざまな角度の傾斜がついた壁

 主に鍛えられるのは、体の中心部の筋肉である体幹(インナーマッスル)。金﨑さんは「不安定な場所に立ち、落ちないよう体勢をキープする必要があるため、体幹が鍛えられ、バランス力が身につきます」と解説した。

 不安定な足場で踏ん張ったり、近くのホールドに移動したりする時は持久力が鍛えられ、遠くのホールドに手や足を伸ばして移動する時は瞬発的な筋力を使う。有酸素運動と無酸素運動が繰り返され、持久力と筋力をバランス良く鍛えることができるのが特徴という。筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、脂肪を燃焼しやすい体を作ることにもつながる。

▷鍛えられるのは体幹
 今回は金﨑さんがコースを指示してくれたが、本来は、どんなコースでゴールに向かうのか、左右どちらの手(足)を使うか、ホールドをどのようにつかむのか、すべて自分で考えながら登らなければならない。金﨑さんは「途中で落ちてしまい登り切れなかった時に、なぜうまくいかなかったのか、どうしたらうまく登れるのか、と考えることがポイントです」と、上達のこつを教えてくれた。

 金﨑さんは「天候を気にせず年中いつでもできることや、楽しく体を動かせることがクライミングの魅力」と話した。利用者からも「楽しく運動を続けられる」「ゴールした時の達成感がくせになる」との声を聞くという。

黙々とコースに挑戦する常連客

 確かに、難しいコースを自分なりの方法でゴールできると達成感を感じられそうだ。初級、中級、上級と順に挑戦し、一歩ずつレベルアップする感覚を味わえるのもうれしい。筋力だけでなく、考える力も必要で、年末年始でなまった頭と体のトレーニングに良いスポーツだと感じた。これでもし痩せられて、身体が引き締まって見えたら最高だ。

 クライミングパークHOMEは午前10時~午後10時営業(日曜・祝日は午後8時まで)。定休日は火曜日。レンタルシューズ代は300円。クライミング専用のシューズであれば、持参して使える。パンツスタイルの動きやすい服装がお薦め。更衣室はジムの1階と2階、それぞれに設置している。
 利用料は、一般1,300円、大学生1,100円、高校生800円、小・中学生600円、未就学児は無料(いずれも1日)。