「僕は、今でもお母さんと一緒に風呂に入っています」-。もう17年前のことである。2005年度少年の主張島根県大会で弁論に立った隠岐の島町立西郷中学校3年の高梨敬史さんは、こう切り出した。会場は一瞬「エッ」という空気に。「お母さんは障害があるので、僕が体を洗っています」。母親を抱きかかえて湯船につけ、着替えも手伝う。話が進むうちに聴衆からはすすり泣きも聞こえた▼そんな昔のことを思い出したのは、「ヤングケアラー」という言葉に引っ掛かったからだ。人手不足の介護士を呼び込むために「若い介護士の呼称にまた横文字か」と早とちりした▼高梨さんのように、病気の親や兄弟の世話をする18歳未満の子どもたちをヤングケアラーと呼ぶようになったのは、ごく最近のこと。「親孝行」の響きでは覆い尽くせない切実さの実態がある▼島根県が19年度に実施した子どもの生活実態調査に携わった島根大の宮本恭子教授の推計によると、県内のヤングケアラーは約千人。小中高のクラスに2人の割合。「子どもは養護される存在で、介護するという認識そのものが社会にない」と宮本教授▼介護サービスが利用しづらい土日や夜間に子どもに負担がかかりやすい。相談しようにもどこにしていいのか分からないのが実情という。勉強や友達との交流を犠牲にして家族を支える健気(けなげ)さ。社会がもっと目を向けなければ。(前)