白いご飯と走ることが大好きという小学6年の男の子。陸上大会の日はいつも緊張でご飯が喉を通らず、ゼリー飲料を流し込んでいた。思うような記録が出ず悩んでいたところ、お母さんがラップでくるんだピンポン球ほどのおにぎりを持たせてくれた▼レース前にパクリと一口。後半のスタミナ切れがなくなり、「ご飯の底知れないパワーのすごさを知った」。JAグループの「ごはん・お米とわたし」作文コンクールで内閣総理大臣賞に選ばれた作品のエピソードがほほ笑ましい▼一口おにぎりは「パワーボール」と呼ばれ、競泳の五輪選手たちが栄養補給に食べているのだそう。調べて探り当てたというお母さんが知ってか知らでか、コメの消費は減り続けている▼スーパーの売り場で「コロナに負けるな!島根米」の増量キャンペーンも近頃目にする。外食需要が減った影響はあろうが、底流にあるコメ離れは深刻だ。食卓でパンや麺類に押され、いつしか「ダイエットの敵」とのレッテルまで貼られた▼日本人の主食の復権に、この人の力を借りられないものか。フィギュアスケートの羽生結弦選手も試合前や練習の合間にパワーボールを食べているという。大逆転での五輪3連覇と、前人未到の4回転半ジャンプにきょう挑む。おそらく緊張を超越した心境で食べる一口。大きなパワーになってほしいと願いをコメて。その瞬間を見逃すマイ。(史)