市民の「声なき声」に耳を傾ける住民投票はほぼ年に1回、日本のどこかで条例が制定され、実施されている。その先駆けは1996年に新潟県巻町(現新潟市)であった原発建設計画の是非を問う住民投票だった。投票率は88・29%。反対が多数を占め、計画は撤回された▼あれから四半世紀。賛成の民意が示された例もあり、住民の「政治参加」手段の一つとして認知されるようになった▼今月、米子、松江、境港の各市議会に、島根原発2号機の再稼働の是非を問う住民投票条例案が出された。米子市では伊木隆司市長が「国策である原発再稼働は国が判断すべき」「市の意見は住民の代表で構成する市議会の議論を踏まえることが最善」と反対し、市議会も否決した。ただ、直近の市長選が無投票、市議選が過去最低の投票率47・31%だったことを考えれば、改めて市民に問うても良かったはずだ▼審議中の松江市でも上定昭仁市長は再稼働判断を「難題」と言い、「市長と市議会が責任ある議論を経て判断する方法がふさわしい」と反対している。ならば投票結果を踏まえて堂々と話し合えばいい▼自民党などが今、意欲を示す憲法改正は96条に基づいて国民投票を行う必要がある。憲法こそ「国家の根幹」であり、改憲は論点の多い「難問」だ。住民投票を拒む市長や市議たちは、これにも反対するのだろうか。主権者の声が届く政治を願う。(文)