「カリスマ兄弟」の出現は時代背景も味方したのだろうか。先日亡くなった作家で元東京都知事の石原慎太郎さんと、弟の俳優・故石原裕次郎さんのことだ。慎太郎さんが芥川賞作品『太陽の季節』を発表したのは1955年。裕次郎さんの初主演映画『狂った果実』の公開は翌年。今の日本と違い人口構成で「ユースバルジ」と呼ばれる若年層の膨らみが増大していく時期と重なった▼当時は15~29歳の人口比率が、今のほぼ倍の27%台。逆に65歳以上の高齢化率はまだ5%台だった。血気盛んな若年層が増えれば増えるほど、社会の勢いは増す半面、政治的に不安定になったり、カウンターカルチャー(抵抗文化)が台頭したりするとされる▼当時の大人たちが顔をしかめ、文壇の賛否が真っ二つになった慎太郎さんの受賞作も、古いモラルや社会に縛られない若者像を提示。その後現れる「○○族」や若者文化の源流になった▼それから70年近く。「ユースバルジ」のピークとされる65年に比べると、総人口は約2800万人増えたのに、15~29歳は約1千万人も減少。若年層の比率は世界でも最低レベルになり、逆に高齢化率が30%に迫る▼若年層が少ない社会は変革の動きが起こりにくい。そんな状況のままでいいのかどうか。ここは若年層に代わり一大勢力になった「シルバーバルジ」の考えどころだ。楽隠居を決め込むのはまだ早い。(己)