住友生命が毎年募集している創作四字熟語。世相を反映した昨年の入賞作にこんな熟語があった。『三冠(さんかん)四願(しがん)』。「三寒四温」をもじったもので、昨年9月、将棋の八大タイトルの一つ「叡王」を奪取し三冠を獲得した藤井聡太さんに、「四冠も取ってほしい」という願いが込められた▼審査結果が発表されたのは昨年末だったが、史上最年少記録を次々と塗り替える19歳はその1カ月前に「竜王」も奪取。審査員の寸評欄で歌人の俵万智さんが「なんとすでに願いがかなってしまいました。『四冠達成』ですね」と驚いていた▼その驚嘆もまだまだ序の口だったようだ。きのうの第71期王将戦7番勝負の第4局で渡辺明王将(37)をストレートで下し、史上4人目の五冠を成し遂げた。19歳6カ月での達成は、羽生善治九段(51)の22歳10カ月を29年ぶりに塗り替える最速記録になった▼ここで下手の横好きながら創作四字熟語に挑戦してみる。14歳2カ月でのプロ入り、数々のタイトル奪取に、10代での九段昇格など、そのスピードは異次元の範疇(はんちゅう)ということから<速度異範(そくどいはん)>(元ネタは速度違反)▼今の調子なら前人未到の八冠独占に向けて視界も良好だけに<八冠良向(はっかんりょうこう)>(発汗療法)といったところか。それでも「打倒藤井」を掲げる棋士たちが立ちふさがるのは間違いない。<冠全制覇(かんぜんせいは)>(完全制覇)に向けては、もう一汗、二汗の研鑽(けんさん)が必要なのだろう。(健)