文部科学省=東京・霞が関
文部科学省=東京・霞が関

 大学生は1こま90分の講義を受けるために90分の予習をし、90分の復習をする-ということが大学設置基準に書いてある。義務ではないが、建前としては「超」が付くほど真面目な優等生の想定だ。

 わが身に置き換えると、バブル以前の「レジャーランド化した」と皮肉られた学生時代には、出会った記憶がない。現在はどうか。大学教員に聞くと、大半の学生は奨学金を受け、アルバイトを掛け持ちしてやりくりしており、時間的余裕はなさそうだ。

 日本の大学教育は、英語論文の掲載数の低さなどから国際ランクが低迷している。その背景には博士課程の学生数の減少と、少子高齢化に伴う大学経営の厳しさから研究力、教育力が低下したことがある、といわれる。

 そこに出てきたのが文部科学省の改革案である。学部と修士を5年間で一体化し、大学院レベルの学びを学部在籍中に提供、修士課程を1年にする。学生の経済的負担を減らす狙いだが、「優等生育成プログラム」的改革は効果があるだろうか。

 「博士課程を出てもそれに見合う就職先がない」という時代が続いた。企業の採用も文系・理系の垣根を低くし専門教育の在り方は揺れている。教育にかけるお金は、いずれ国を豊かにするお金だ。教育の質を追求する改革は大事だが、学びの時間を絞り出すために大学教育無償化などの「生きたお金の使い方」をそろそろ考えても良いのでは。(裕)