先日、知人と昼食を取った。飲食店の支払いは現金か食事券のみ。知人は持ち合わせがなく、こちらが食事券で立て替えた。後日、代金を回収に行くと「今、財布に10円しか入ってない」と先延ばしに。普段は現金を持たず、クレジットカードやQRコード決済のみを利用しているという▼他国に後れを取る日本はキャッシュレス化の推進に躍起だが、知人のように現金を持ち歩かない人は少数派だ。現金自動預払機(ATM)の順番待ちや、スーパー、商業施設のレジにできる長い行列にうんざりする人も多いだろう。時間の無駄だけではない。新型コロナウイルスの感染を抑制するためにも、人が集まる場所では非接触で手早く用事を済ませたい▼半面、支払いでキャッシュレスを選ぶと、割引率やポイント還元率が悪くなる店が少なからずある。カードやQRコード決済で得る特典と比べても現金払いが割安になる▼こうした店舗がキャッシュレス決済に消極的なのは、手数料の高さが要因。店は支払額の1~10%を決済会社へ支払う。販売促進のために受け入れる店があるものの、特に地方の小さな店舗にとっては負担が重いため、現金払いに重きを置くというわけだ▼キャッシュレス決済が広く普及する中国では手数料が軒並み1%未満、ゼロという決済会社もあるという。前政権は携帯電話料金に手を入れた。現政権は残る〝聖域〟を崩せるか。(釜)