搾乳する酪農家=2021年12月、北海道鶴居村
搾乳する酪農家=2021年12月、北海道鶴居村

 「赤い牛乳から作ったバターなんて、世界中にうちしかきっとないよね」。はしゃぐ純と螢に、父・黒板五郎が冗談を飛ばす。「黒板バターって売り出すか!」。北海道富良野を舞台にした1981年放映のテレビドラマ『北の国から』に出てくる、ほほ笑ましい一家団欒(だんらん)の場面だ。

 「赤い牛乳」とは、生乳の生産調整のため市場に出回らないよう食紅を混ぜたもので本来廃棄される。五郎さんは「もったいない」と、牧場を営む清吉と草太の家から譲ってもらったのだろう。飲めるのに捨てられる理不尽さをドラマは問いかける。

 生乳は需給調整が難しく、コロナ禍の需要減などで2021年の年末から年始にかけ大量廃棄の危機に陥ったことは記憶に新しい。小売店や学校給食だけでなく、家庭でも牛乳は廃棄されがちだ。冷蔵庫から取り出して賞味期限切れに気付き、後ろめたさを感じながらシンクに流した経験は多くの方がお持ちだろう。

 そんな状況を見かねた乳業各社が対策を打ち出している。消費者庁のガイドライン見直しを受け、賞味期限を延長する動きが出始めた。そればかりか、大手の一社は一般的な1000ミリリットルより少ない、飲みきりサイズの750ミリリットルパックを発売したという。

 もちろん消費者の意識や行動がついてこないと効果は見込めない。どうすれば捨てずに済むのか、いま一度考えてみたい。きょうは「食品ロス削減の日」。(史)