イノシシの鳴き声の波形を分析する西中涼乃さん(左)と、木下大助教=米子市彦名町、米子工業高等専門学校
イノシシの鳴き声の波形を分析する西中涼乃さん(左)と、木下大助教=米子市彦名町、米子工業高等専門学校

 米子工業高等専門学校(米子市彦名町)の5年生2人が卒業研究で、山林のさまざまな音の中からイノシシの鳴き声を判別するシステムの開発に取り組んだ。出没地点や行動、生息実態の把握に生かし、イノシシによる農業被害対策につなげたい考え。基礎研究にとどまり道半ばだが、後輩が引き継ぐ予定。地域課題解決に一役買う研究の成果が注目される。

 機械工学科の村社(むらこそ)尚哉さん(20)、西中涼乃さん(20)の2人。村社さんは音の研究に、鳥取県琴浦町出身の西中さんは県内の鳥獣被害に興味があり、木下大助教(30)の提案で取り組み始めた。

 システムの基礎として、プログラミング言語「Python(パイソン)」を使い、イノシシの鳴き声を判別できるプログラムを作成した。インターネットで拾ったイノシシの鳴き声、自宅周辺で録音した川の流水音、セミ、ヒグラシ、スズムシの鳴き声を音声波形で表し、波形パターンでイノシシの鳴き声の有無を判別できるよう、設計した。

 作成したプログラムは、イノシシの鳴き声が、セミやヒグラシの鳴き声と混じった場合は100%の精度で有無を判別できた。川の流水音と混じった場合は99・61%、スズムシの鳴き声とは80・48%の精度だった。

 今後の課題は、実際に山林で暮らすイノシシの鳴き声でも判別できるかどうかや、さまざまな音が複雑に入り交じる自然の中で判別できるかどうか。プログラムの改良が必要という。

 村社さんは「イノシシの音声を自然音の中から判別することが可能だと分かった。総合的にイノシシと判断するシステムを開発できる可能性を感じた」と話す。木下助教は「音を判別できれば個体の動いた経路特定にもつながる」と意義を語り、2人の後輩に研究を引き継いでもらう考え。関心を示す学生がいるという。

 県鳥獣対策センターによると、県内で野生鳥獣による農作物被害額は2020年度は9500万円。04年度の2億7900万円をピークに減少傾向だが、約8割はイノシシが占める。西信介副所長は「鳴き声で解決につなげる方法は聞いたことがなく、興味深い」と今後の進展を期待する。
      (柴田広大)