国会における野党第1党の責務は何か。政府による行政執行を監視し、問題点をただした上で、対案を示していくことであろう。とりわけ政権追及の姿勢が揺らげば、存在感は希薄になり、結果として政権交代の道は開けないはずだ。
立憲民主党は泉健太代表ら現執行部が発足後、初の党大会を開いた。採択された2022年度活動計画は「政策立案型政党」として「具体的で建設的な政策提案を続けていく」としつつ、「政府与党の動向を監視し、国民の利益に反する点があれば厳しく追及する」と明記した。
泉氏もあいさつで「政権運営の監視や適切な批判は、国民に課題を明らかにする上でも非常に重要だ」と訴えた。最大野党の党首として当然の認識である。
党大会に先立ち22年度予算案が2月22日に衆院を通過した。現行憲法下で2番目の早さだった。立民は例年以上の審議時間を確保し、新型コロナウイルス対策における濃厚接触者の待機期間や、ひとり親家庭援助で政府方針を変更させたことを成果に挙げている。
しかし、立民など野党の政策提案や是正要求の多くについて、岸田文雄首相は「検討したい」「しっかり受け止める」などと方向性が判然としない言い方でかわす場面が少なくなかった。そんな答弁を許していては、政府、与党との対立軸は明確にならない。
国土交通省の建設受注統計の書き換えや自民党京都府連による国政選挙前の現金配布を巡る質疑も、中途半端に終わった印象が強い。民間企業から報酬を得ていたとされる内閣官房の経済安全保障法制準備室長が事実上更迭された問題では、「調査中」とする政府から詳細な説明を引き出せていない。
どれもマスコミ報道が先行したが、政権運営に疑念が生じれば、徹底追及し真相に迫るのが野党の役割である。立民が敗北した昨年衆院選での「批判ばかりの政党」との攻撃によって腰が引けているとすれば、存在意義が問われかねない。
立民の迫力不足は、政府、与党と対(たい)峙(じ)すべき野党陣営が結束できていないのも理由だろう。
国民民主党は衆院採決で22年度予算案に賛成した。主要野党としては異例だ。国会の質疑と別に玉木雄一郎代表が岸田首相と直接やりとりし、国民民主が重視するガソリン税軽減の確約を得たからだという。
そうだとしても、有権者の目が届かないところでの談合であり、野党にあるまじき国会軽視と言うほかない。国民民主の予算案賛成に注文を付けず、自民党との接近が目立つ連合の態度にも首をかしげざるを得ない。
泉氏は党大会で「政権の考え方を全て認めるのか。本予算には反対するのが政権を目指す野党のまっとうな姿勢だ」と非難した。うなずける指摘ではあるが、野党をまとめきれない泉氏ら立民執行部の責任も大きい。
夏の参院選は、立民が党勢を回復し、政権を担える政党として命脈を保てるかの選挙になる。
党大会では、衆院選以来の課題である共産党との選挙協力の在り方について、議論にならなかった。参院選でも国民民主や共産との共闘を維持するのか。国会対応とともに、泉氏らが毅(き)然(ぜん)として指導力を発揮しなければ、立民の埋没に拍車がかかるだけだ。