新型コロナウイルス対策で初の緊急事態宣言が発令されてから2年たった。しかしオミクロン株の派生型「BA・2」が拡大し、専門家は「第7波」突入との見解を表明した。コロナとの闘いはなお出口が見えない。

 政府は「第6波」を抑え切れないまま解除した「まん延防止等重点措置」の反省を踏まえ、今後は社会経済活動を止めずに感染被害を最小化していく「共存路線」へ軸足を移していく考えのようだ。

 オミクロン株は感染力は強いが重症化しにくく、若い世代は無症状や軽症の人が多い。そのため緊急事態宣言やまん延防止措置で飲食店やイベントを中心に広く行動制限する対策は実態に合わないと専門家や自治体が指摘している。効果に比べ経済社会のダメージの大きさを考えれば、見直しは不可避だろう。

 第一に目指すべきは、入院や外来の患者が殺到して医療機関が機能不全に陥り、救える命も救えなくなる事態を防ぐことだ。そのため、重症化しやすく死亡リスクも高い高齢者や持病を抱える人たちを最優先で感染から守り、感染した場合でも機動的に手厚い医療を提供できる体制の強化に対策の重点を移すべきだ。

 厚生労働省に助言する専門家は、全年代で新規感染者が増加傾向だとして「明確にフェーズが変わり第7波に突入した」と指摘した。中でも10~20代の活動的な若者で増え方が著しい。過去の例でも、流行の初期段階で若い世代の感染が増えている。移動、交流機会が増える新年度を迎えた今は感染爆発の火を付けないため踏ん張り時だ。

 新規感染者のうち若者や子どもの割合が大きいのは、オミクロン株による第6波からの特徴だ。ワクチン3回目接種の完了者が65歳以上で8割を超すのに、全体では4割程度にとどまっていることが示すように、若者らの接種率が低いことが響いたと見るべきだ。

 若い世代の感染を減らさなければ、彼らから高齢者への感染ルートを断つことはできない。ワクチンと飲み薬の普及は依然として感染対策の大きな柱であり、なお力を注ぐ必要がある。

 そして、患者治療の最前線である医療の逼迫(ひっぱく)防止には、高齢者らの感染を早期に把握し重症化させない仕組みの強化がまさに対策のツボとなる。それには、第6波でクラスター(感染者集団)が多発し感染の中心の一つになってしまった高齢者施設への対応が重要だ。

 厚労省は、介護施設で感染者が出た際、24時間以内に医師、看護師らの支援チームを派遣する体制整備を自治体に求めた。従来入院が基本だった高齢感染者でも、施設で暮らす人は医師らがそこで治療し、クラスターも防ぐという方向転換であり、効果に期待したい。

 介助が必要な高齢感染者に対処できなかったため低い使用率にとどまった各地の臨時医療施設についても、厚労省は介護職員配置などを要請した。せっかく医療逼迫対策の決め手として設置した施設が使われなければ宝の持ち腐れだ。医療、介護の連携強化は当然だ。

 上海をロックダウン(都市封鎖)した中国を例外として、世界では行動制限を撤廃、緩和しコロナと共存を図る路線が主流だ。日本も加わるなら、医療逼迫を二度と起こさない備えと、危機的状況なら直ちに制限強化に戻る即応力が必須であることは言うまでもない。