安来市出身の画家、加納莞蕾(かんらい)(1904~77年)の画業と平和運動をたどる企画展が16日、同市広瀬町布部の加納美術館で始まった。戦後、フィリピンの日本人戦犯の赦免運動に尽くした功績はもちろん、戦中には従軍画家として戦争画を手掛けたことなど画家としての歩みがうかがえる。7月10日まで。
作品や資料計93点が並ぶ。目を引くのは1944年に戦地の中国で描いた「風陵渡高地占領」(複製)。ほこりにまみれ、疲れた様子で敵を追う兵士の苦労がしのばれる。親しい兵士の戦死などの体験を踏まえ、戦地の実情を描いたとみられるという。多くの兵士が後ろ姿で顔が見えない構図が秀逸で、見る者に身内の姿を重ねる余地を与える。
従軍画家に求められる戦意高揚とはほど遠い作品でありながら当時、戦争画の展示会で最高賞に輝いた。「戦争画として高度のものとは言えないだろうが、従軍体験によって作者の敢闘がうかがわれる」と言葉を選びながら褒める美術家の批評文にも世相がにじむ。
従軍画家として戦争に加担したことに心を痛め帰郷後、戦死した同郷の住民らの肖像画を描いており、企画展で展示している。
このほか三瓶山を気に入り、よく描いていた。さまざまな作風、構図の三瓶山を集めたコーナーもある。
入館料は一般1100円、高校・大学生550円。小・中学生無料。火曜休館(5月3日は開館し6日に振り替え休館)。
(桝井映志)