エアコンの温度を調節するイラスト
エアコンの温度を調節するイラスト

 これから夏に向かって気温が上がると、冷房や冷蔵庫など電気の使用量が増える。原油価格の高騰で電気料金は値上がり傾向にあり、この夏の支出増が今から心配だ。自宅で手軽にできる節電方法を紹介する。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 ▼節電前に意識することは

 日本は現在、電気の多くを石油、天然ガス、石炭の化石燃料を燃やして生み出している。節電は電気料金の節約につながるほか、地球環境温暖化の抑止に貢献できる。節電方法や温暖化対策に詳しい公益財団法人・しまね自然と環境財団の環境事業課長、葭矢(よしや)崇司さん(50)に話を聞いた。

しまね自然と環境財団の葭矢崇司さん

 葭矢さんは「節電となると使用する電力の削減、という視点になりがち。夏の場合はまず、家の中に熱を入れないことを考えてほしい」と強調する。葭矢さんによると、夏に冷房をつけた際、家の壁や屋根など各部位から熱が入る割合は、窓からが73%で最高だという。

出典)一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

 窓際にカーテンを設置することである程度は外からの熱を遮断できるが、最も有効なのは、すだれやアシで作られたよしずを窓の外に立てかけ日光を屋外で遮断すること。これだけで屋内の温度上昇はかなり抑えられるという。

 葭矢さんは「家の中に熱が充満した状態でエアコンをつけると、冷やすまでに余分に電力がかかる。熱の遮断は節電に取り掛かる前に意識してもらいたい」と指摘する。その上で家電ごとにできる節電方法を教えてくれた。

夏の風物詩のすだれ。昔ながらの道具だが今も現役で、日光避けに効果的だそうだ


 ▼クーラー、フィルターを掃除するだけで電力削減

 まずは夏になると一番出番の多いクーラー。環境省は冷房時の室温の目安が28度になるよう呼びかけるが、夏真っ盛りの中ではもっと低い設定温度で過ごしている人もいそう。

 葭矢さんが真っ先に勧めるのはクーラーのフィルター掃除。フィルターが汚れて詰まっていると室内の暖かい空気を適切に取り入れられず、冷房の効きが悪くなり、余分な電力が必要になる。フィルターの目詰まりを解消するだけで効率的に稼働し、フィルターが汚れている場合と比べて約4%の電力削減になるという。

天井埋め込み型のエアコンを掃除する様子。家庭用のエアコンは外したフィルターのほこりを掃除機で吸い取り、水洗いする程度で十分らしい

 フィルター掃除のタイミングについて、葭矢さんは2週間に1回程度を推奨する。また、クーラーの室外機が日光で温まると熱排出の効率が悪くなるため、室外機を日陰に置くか、窓と同様に近くによしずを立てて日光を遮断するのも効果的だという。

 葭矢さんによると、クーラーが一番電力を使うのは起動時で、設定温度を下げた際にもかなりの電力を要する。「クーラーをつけたらなるべく一定の設定温度を続けてほしい。あとは扇風機やサーキュレーターなどあまり電力を使わない家電で、室内の空気を巡回させると涼しく感じる」とアドバイスする。

最近は写真のような室外機専用の日よけカバーがある。室外機の熱を下げることで効率的に熱を排出できる

 設定温度を1度高くするたびに約13%の電力削減になり、27度から28度にすることで年間の電気代は約700円の節約になるという。ただ、最近はクーラーを使用しなかったり、適切な温度設定にしなかったりすることで、屋内で熱中症になる人がいると言う。葭矢さんは「節電して体を壊しては意味が無いので、体調と相談しながら無理をせずに試してほしい」と注意点を付け加えた。

 

 ▼冷蔵庫、冷蔵は「半分」冷凍は「満杯」

 続いて、冷蔵庫の電力の節約方法を紹介する。

 冷蔵庫の冷蔵部分には、ついつい物を多くいれがちだが、実は適度に隙間が空いていた方が電力を使わずに済む。葭矢さんは「中身が少ない方が庫内の冷気が効率的に回り、少ない電力で冷やすことができる」と解説する。

 経済産業省の調査によると、冷蔵部分に中身が満杯の状態から半分程度に減らすだけで年間48キロワットの電力削減、電気代約千円の節約になる。このほか、温かいものを冷蔵庫に入れると冷やすために余分な電力がかかるため、常温で冷ましてから入れると良いという。

冷蔵庫にはつい物を入れられるだけ入れてしまいがち。適度に断捨離し、ゆとりある使い方を心がけると節電する上で効果的だ

 冷凍部分は逆に物を詰め込んだ方が、冷凍品が互いに保冷剤代わりとなり、冷やす電力が少なくて済む。冷蔵庫の賢い使い方を知ると節電、節約が図れそうだ。

 このほか、照明を発光ダイオード(LED)に変更するといった節電方法があるが、葭矢さんは「照明やテレビなど生活に密着した家電の使い方を思い切って変えるのは難しい。少しの意識で変えられるクーラーや冷蔵庫がお勧め」と話す。

 自宅ですぐにできる節電方法は以上の通りだが、長期的に考えると、冷蔵庫など10年以上使っている家電製品については買い換えも検討したい。葭矢さんによると、最近は省エネに配慮した家電が多く開発され、20年前のものと比べて年間の電気代の差が1万円以上広がることもある。

節電効果を前面に打ち出した家電製品。昔と比べて電気代を抑えられる製品が続々登場している

 環境省が作成したインターネットサイト「しんきゅうさん」を使えば、現在使っている家電の種類や製造年、メーカーと新しく買いたい家電の同様の情報を入力するだけで、年間の使用電力や電気代の違いを算出できる。家電を買い換える際の参考にできそう。

 

 これから夏に向かって気温が上がり始める。繰り返しになるが、節電を意識し過ぎて体調を崩してはいけない。自分や家族ができる範囲で節電を意識し、夏を乗り切りたい。