総務省による4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月比で2・1%と約7年ぶりの高い上昇率になった。日銀の目標である2%を突破したが、日銀は今の大規模金融緩和を維持する方針だ。しかしその姿勢が円安を進め、物価高に輪をかけている。10年目に入った超低金利政策がなお適切か、修正の余地はないのか政府・日銀がきちんと議論すべき時だ。

 4月の上昇はウクライナ危機の影響などで電気・ガスやガソリン、食品が値上がりしたためだ。昨春あった携帯通信料金の引き下げがこれまで指数全体を押し下げていたが、その特殊要因がなくなった点も作用した。

 家計の立場から見ればパンや食用油の幅広い食品に加え、電気・ガス料金の高騰に昨年来悩まされていただけに、ようやく統計が生活実感に追い付いた形と言えよう。

 デフレ傾向にあった日本で久しぶりの物価上昇局面であり、何よりも景気への影響に細心の注意を払わねばならない。

 今回の世界的なインフレは、新型コロナウイルス禍から回復した米欧などでの需要増により昨年以降、原油・ガスのエネルギーや小麦など穀物の価格が上昇。海上輸送や一部労働力の不足がさらに押し上げた構図だ。

 そこへ今年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が発生。日本では急速な円安による輸入コストの増大が重なった。

 これらの要因をみれば今回の物価高は「複合インフレ」と言えるだろう。ウクライナ危機の長期化が指摘される点を考えれば、短期の収束を見込む楽観は戒めたい。

 物価上昇分を埋め合わせる賃金アップがあるならば問題はない。だが今のところ厳しそうだ。連合の集計によると今春闘の賃上げは全規模平均で2・10%、組合員100人未満の小企業は2%を割っている。4月の消費者物価は生鮮食品を含めた総合で2・5%上がっており、単純計算ではインフレに賃上げが追い付いていないからだ。

 このままでは消費が冷え込み、コロナ禍から回復しつつある国内景気を下押しするリスクが高い。不況下での物価上昇「スタグフレーション」が現実味を帯びている。その点、政府がこのほど決定した物価高対策はガソリン価格の抑制に偏っており、生活全般への支援では力不足と言わざるを得ない。

 問題は「物価の番人」であるはずの日銀が、この局面で動く気配のない点である。今の物価高はエネルギー高を主因とした一時的なもので、利上げはかえって景気を悪くするとの理屈からだ。この先、2%超の状況が続いても、賃上げを伴わないインフレならば大規模緩和を続けるという。

 1~3月期の実質国内総生産(GDP)のマイナス成長が示すように、景気がいまだに立ち直っていないのは事実だろう。だがその一方で企業の3月期決算は、資源高や海外景気にけん引されて過去最高益が相次ぐ。

 日銀は2013年から大規模緩和を始め、今も「短期金利がマイナス、長期金利は0%」を続ける。だが、これほどの超低金利をなお維持する必要があるのだろうか。

 超低金利は国家財政の借金頼みを許すなど日本経済の体質改善を先送りさせ、足元での記録的な円安を招いた。行き過ぎた金融緩和の弊害を今こそ直視すべきだ。