新たな「県都の顔」を決める松江市長選は、無所属で元日本政策投資銀行松江事務所長の上定昭仁氏(48)が、新人による三つどもえの戦いを制した。新型コロナウイルスの「第4波」が全国に広がる中、リーダーの判断力、決断力、そして指導力が問われており、冒頭から重大なかじ取りを担うことになる。

 選挙戦で上定氏は、コロナ禍や人口減少などによる閉塞(へいそく)感を打破するためのキーポイントとして「連携、連帯、協調」を挙げた。政投銀時代は、大手製造業の業務提携や耕作放棄地を活用した農業振興など、各地で幅広いプロジェクトに携わっており、キーポイントの三つの実践はお手の物だろう。

 ただ、差し迫ったコロナ対策は容易ではない。国や島根県、医療機関と連携してワクチン接種を迅速に進めるとしているものの、肝心のワクチン供給量が足りず、高齢者はおろか、先行した医療従事者への接種さえ滞っている状態。国や県への働き掛けを強めるとともに、疲弊する中小企業や個人事業主の支援に努めてほしい。

 人口減少対策では、「みらい社会対応ラボ」を設置し、少子高齢化社会を豊かに生きるための解決策を「産官学金」の連携によって探り、課題解決のための政策をまとめて県や国に提言するという。

 理想が高いのはいいが、全国の自治体がさまざまな対策を講じているにもかかわらず、有効な手だてが得られていない。3月末時点の松江市の人口は、旧東出雲町との合併以降、初めて20万人を割り込んだ。掛け声だけで画餅に帰してはならない。確かな成果が求められる。

 市役所本庁舎(松江市末次町)の現地建て替え事業を巡り、市民団体を中心に不満が噴き出した市政運営の手法にも注目が集まる。この問題では、計画を進める過程で、市民に納得してもらえる丁寧な議論の積み重ねができていたとは言い難かった。

 選挙戦では可否の考えを明確にしなかったが、今後、立地自治体の首長として、中国電力島根原発2号機(同市鹿島町片句)の再稼働の判断が求められることになる。多くの市民の声を聞き、透明性のある議論を進めてほしい。

 5市による広域連携で山陰両県のけん引役を担う、中海・宍道湖・大山圏域市長会の顔触れは、上定氏を含めて、この1年で大きく変わった。

 昨年7月の境港市長選で元市総務部長の伊達憲太郎氏(62)、10月の安来市長選では前市議会議長の田中武夫氏(72)が、それぞれ初当選。今回の松江市と同様に、新人による三つどもえの争いとなった今月11日の出雲市長選は元市議の飯塚俊之氏(55)が当選を果たした。1年前と同じなのは、11日告示の米子市長選で無投票再選を果たした伊木隆司氏(47)のみだ。

 経験値は乏しくなるものの、見方を変えれば、従来の手法にとらわれず、新たな地域活性化を模索し、実行できるチャンスでもある。

 上定氏は「まず、松江市と島根県の連携を図り、中海・宍道湖・大山圏域といった広域連携で松江がリーダーシップを取っていく。雇用を増やし、所得水準を上げ、生活が豊かで誇れる松江にする」と意欲を示す。

 市長会では2期目の伊木氏に次いで若いが、県都の首長として圏域をまとめ、持ち前の調整力に加えて、強い指導力も発揮してほしい。