任期満了に伴う江津市長選にはいずれも無所属新人の元国会議員秘書の中村中氏(43)と、元島根県議の山本誉氏(64)が立候補した。両候補へのアンケートで「産業振興」「観光振興」「地域医療」の考えを聞いた。(届け出順)

 

中村 中 氏〈無新、43歳〉

「産業振興」

 江津市は工都として、地場産業の窯業に加え、市内各地や工業団地に誘致企業が進出してきた。サテライトオフィスの整備も行い、幅広い業種で進出ができる地域になった。雇用の場を確保するためソフト、ハード両面の企業に対し、先頭に立って働きかける。一部で実施されている誘致企業と地元企業の協業もさらに進めたい。桜江町との合併で1次産業の可能性がより一層広がった。1次産業の6次産業化を含む高付加価値化にも、市として支援する。ビジネスプランコンテストに代表されるスモール起業も支援し、挑戦できるまちとしたい。

 

「観光振興」

 国事業の活用と市内外企業の協力を得て、有福温泉の再生にようやく着手できた。泊食分離や、温泉リゾート施設・風の国を含めた体験型の滞在など、これまでにない取り組みを行うこととしている。国の支援が滞ることのないよう、事業者と一体となって働きかけていく。地域の特色を感じることも観光の魅力の一つ。石見焼のような伝統工芸、神楽などの伝統芸能が観光資源となるよう、取り組んでいく。観光は広域で取り組むことでさらに効果が上がるため、秘書時代のつながりを生かし、近隣市町との連携をこれまで以上に強化していく。

 

「地域医療」

 地域の医療体制確保は安心安全な暮らしには不可欠だ。済生会江津総合病院の常勤医の減少は大きな課題だが、即効性のある解決策は乏しい。私が先頭に立って医師確保に向けた働きかけを諦めることなく継続していく。地域枠での医学部進学者や医療系学校に進んだ学生に対し、在学中、卒業後を通して接点を持ち続け、地域医療に貢献する人材づくりを行う。地域に戻る学生に対する医療奨学金などの支援も実施したい。地域コミュニティーを核とした健康増進の取り組みで医療を必要としない人が増えるよう、地域活動への支援も行いたい。

 

 

山本 誉 氏〈無新、64歳〉

「産業振興」

 山陰道の建設促進や工業団地の拡張整備などによる企業誘致は積極的に進めるものの、地域の優位性を高めることが必要だ。その一つとして産業人材の育成を根本的に考え直す。県西部唯一の工業高校を拠点的な実業高校として再編整備し、企業のニーズに応じられる人材を供給できるようにしたい。まずは江津工業高校とポリテクカレッジ島根との工業教育の連携強化から進める。誘致企業の従業員が近隣市町に居住するようでは効果が半減する。良質な賃貸住宅や宅地などの供給支援なども含め、全てにおいて企業に選ばれる江津を目指す。

 

「観光振興」

 江津市の重要な観光資源である有福温泉は疲弊し、衰退の極みに達していた。幸いに県外業者の投資により再生の可能性が見えてきたが、市民が望み必要とする有福温泉の姿が何なのかを整理することが求められる。風光明媚(めいび)な日本海や江の川の生かし方も重要。万葉集に歌われる地域、江津本町、道の駅、波積ダムなども含め潜在的資源を掘り起こし、深い歴史と新たな文化を持つ観光資源をネットワーク化する。交流人口の増加のため、芸術文化やスポーツのイベント開催支援も重要だ。定住人口は減っても交流人口は増やすことができる。

 

「地域医療」

 済生会江津総合病院を中心とした地域医療は、浜田医療圏域の中での方向付けがなされている。圏域内病院での機能を分担し、市としては先進的な取り組みであるメディカルネットワークの充実、介護医療における各事業所の機能を生かしながら進める。医師確保は、専門医を目指す傾向や医師派遣の条件などがあり、市だけでは難しい。県の強力な支援を得ながら解決し、必要最小限の機能は維持しつつ、再生を進めることが必要だ。各地域の個人病院の存在も重要で、市民がより利用しやすくなるようハードとソフトの両面での支援も考えたい。