公立中学校の運動部活動の在り方を検討していたスポーツ庁の有識者会議が、休日の部活指導を地域や民間など学校外に委ねる提言をまとめた。将来的には平日の指導も学外に移行したい考えだ。子どもたちの心身の育成に欠かせないクラブ活動の大きな転機だ。

 教育現場で課題となっている少子化問題と、教員の働き方改革がその背景にある。

 提言によると、少子化の加速による生徒数減少で、地域によっては部活動維持が難しくなっている。学校の小規模化により、部活を指導する教員数も減少している。

 教員の長時間労働も依然、解消されていない。土、日曜日の部活動従事により、教員の時間外労働が大幅に増えている、とのデータもある。

 部活動の多くは、自らの時間を削ってでも生徒の指導に当たる「熱血先生」によって支えられてきた側面がある。一方、競技経験もないのに顧問を割り当てられた先生も多い。教員個人の熱意や犠牲に頼る指導態勢では、健全な部活動を持続させるのは困難であろう。

 提言は2023年度からの3年間で全ての都道府県で休日指導を外部に委託するよう求めている。その受け皿づくりをどうするか。指導者の確保が喫緊の課題となる。

 総合型地域スポーツクラブ、スポーツ少年団、民間クラブ、大学、プロチームなどが指導者の派遣母体として想定されるが、スポーツ環境には地域間格差がある。人口が減少しているところでは地域スポーツの拠点数が限られ、その担い手も不足している。

 指導者の資質のチェックも必要だし、なにより報酬の財源をどう工面するのか。日本スポーツ振興センターが実施しているサッカーくじからの支援も検討されるようだが、とてもまかないきれないだろう。提言だけ出しておいて、あとは自治体任せでは改革はおぼつかない。予算措置の具体案はまだ見えない。

 スポーツ基本法は「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」とうたっている。部活動が学外に出ることで、スポーツの機会均等を損なってはならない。生徒が負担する会費・部費が増える可能性にも対応したい。地域格差を可能な限り小さくし、経済的に困窮している家庭の生徒にも目配りが必要だ。

 日本のスポーツは、主に中学・高校の運動部活動を土台にして発展してきた。五輪を頂点としたトップアスリートの多くは部活動出身者だ。サッカーのJリーグが掲げた地域密着型のスポーツ振興は未成熟だ。部活動が学校外に出るのに合わせて、指導者の育成を含む地域スポーツ全体の環境整備を進めたい。

 円滑な地域移行には、関係する多くの組織の連携が不可欠だ。国民スポーツ振興を担う日本スポーツ協会のほか、日本中学校体育連盟(中体連)、競技団体、自治体などが目的意識を共有しなければ、施設さえ満足に確保できないだろう。

 スポーツ庁は施策の指針「第3期スポーツ基本計画」をこのほどまとめ、東京五輪のレガシー(遺産)を継承してスポーツによる社会活性化を目標に掲げた。その中心に位置づけたのが地域スポーツの充実である。地域で生徒の部活動を健全に育むことは、日本のスポーツ界の将来をも左右する壮大な挑戦になろう。