今月10日から外国人観光客の受け入れが約2年ぶりに再開される。1日2万人の枠内と少ないものの、段階的に枠を増やすことで観光産業へのてこ入れ、日本経済への刺激になると期待したい。

 ただ、欧米の多くの国が観光客を既に受け入れており、「鎖国」との批判が経済界からは出ていた。観光を基幹産業の一つと位置付け、観光立国を目指してきただけに、もう少し早く解禁に動けなかったのかとの疑問は残る。

 新型コロナウイルス感染症の患者は今後も増える恐れがある。欧米などで感染確認が相次ぐ感染症「サル痘」が国内でも見つかる可能性もある。その際に備えて、水際対策の強化や受け入れストップなど、政府としての訪日客への対応もあらかじめ明らかにすべきではないか。

 新型コロナの流行前、2019年には訪日旅行者は3千万人を超え、旅行消費額は5兆円に迫った。一方、この2年、観光や飲食などの業界は、観光客がほぼゼロになったため雇用を絞ってきている。

 今後、旅行者の増加に合わせて人を再び雇い、教育する必要がある。経営見通しを立てるためにも、政府がどのような段取りで訪日客の受け入れを増やすのか、全体戦略を示すよう提案する。

 海外から繰り返し日本に訪れるリピーターを増やすには、良い印象を持ってもらうことが重要である。そのためには、観光の魅力に加えて、心がこもったおもてなしが不可欠だ。国は、観光地の関係者らとも対話を進め、十分な理解を得ることを忘れてはならない。

 観光客は当面、添乗員が同行するパッケージツアーに限定するという。添乗員を通じマスクの着用や、食事時の感染対策など細かい指示を出しやすいという判断からだろう。ただ、買い物や夜の飲食の際にどうするのかなど課題もある。7日に公表する感染防止対策のガイドラインでは、これらの懸念に応えるよう政府には求めたい。

 観光客を増やすには、今後、個人旅行者の受け入れが不可欠だ。感染状況がどうなると個人客を認めるのか、こちらも見通しを公表すべきである。さらに個人客がコロナなどに感染した場合、宿泊施設や地域の医療施設がどう具体的に対応するかについても確認しておきたい。

 世界経済フォーラム(WEF)が発表した21年版の旅行・観光開発ランキングで、日本が初めて首位となった。観光立国の取り組みが海外でも評価されたと言えるだろう。だが、解決すべき課題も多い。

 19年までは、観光客が特定の場所に集中する事態が起きていた。この「観光公害」を繰り返さないためにも、観光地を抱える自治体は、集中を防ぐさまざまな方策を検討してきたはずだ。地域で着実に実践してほしい。

 コロナの流行に伴って旅先で働くワーケーションや、密を避ける意味も兼ねた自然豊かな地域への旅行が注目されている。これら新たな観光も集中回避の対策になる。海外にもPRしたい。

 日本への観光客は中国や台湾、韓国などが大半を占めてきた。国同士の関係が悪化すれば観光客が一気に減ることは韓国の例からよく分かる。多様化のため欧米や東南アジア、オーストラリアなどからの呼び込みに力を入れるべきだ。