角度によって色が異なって見える「鮎蒔絵香盆」(中央)の説明をする佐々木杏里学芸員=出雲市大社町杵築西、手銭美術館
角度によって色が異なって見える「鮎蒔絵香盆」(中央)の説明をする佐々木杏里学芸員=出雲市大社町杵築西、手銭美術館

 【出雲】江戸時代初期から出雲大社の門前町で、造り酒屋や松江藩の御用宿を営んだ手銭家の美術工芸品を保存する手銭美術館(島根県出雲市大社町杵築西)で、えりすぐりの収蔵品を並べる企画展が開かれている。

 1993年の開館から来年で30周年を迎えるのを前に、3月から開く「館蔵品展」の第2弾として陶磁器、金工品、漆工品など55点が並ぶ。

 江戸時代後期に作られた蒔絵(まきえ)の名手、古満(こま)巨柳(こりゅう)の「鮎(あゆ)蒔絵香盆」は見る角度によって3匹のアユの色が異なり、技法の高さをうかがわせる。普段は単独で展示しない刀のつばだけを並べ、鏡を置いて表と裏の両方の図柄を見えるようにしたほか、小さな「粉溜(ふんだめ)菊蒔絵香箪笥(こうだんす)」や松に止まるタカを描いた楽山焼の大皿が目を引く。

 佐々木杏里学芸員は「大胆な作品と繊細な作品の両方の魅力を楽しんでほしい」と呼びかけた。8月29日まで。火曜休館。 (月森かな子)