自身2度目の合区選挙に臨む自民党の青木一彦参院議員(鳥取・島根合区選挙区)=2期=は15日の国会閉会後、参議院内で「今回も解消できなかったことは非常に残念」と述べた。
7年前の2015年の通常国会は、合区の導入を巡り荒れた。隣接県を統合して一つの選挙区とする合区について、対象の鳥取・島根、徳島・高知の4県をはじめとした地方県の国会議員は、地方選出議員が減ることに激しく反発。当時、青木氏は「有権者の理解が得られる案ではない」とし、公職選挙法改正案を採決する参院本会議から退席した。
反発は実らず、16年参院選で合区が導入された。自民党島根県連の細田重雄会長は解消に向けた進展がないことに「合区が定着しつつある」と嘆く。
▽有権者は諦め
過去2回の合区選挙では有権者の関心低下や諦めが投票率に表れた。16年は島根62・20%、鳥取56・28%。19年は島根54・04%に対し、鳥取は49・98%と下落。関係者は今夏の参院選でさらに落ちるとみる。島根県西端の鹿足郡の有権者は「山陰は東西に広い。候補の顔を見る機会が減れば国政選挙を身近に感じなくなる」と心情を明かす。
解消に向けた機運も盛り上がらない。各党が選挙制度改革の議論を続けていた18年4月。東京都内で合区対象県の議員や首長ら約400人が解消に向けた決起大会を開き、気勢を上げた。会場には7政党が国会議員を送り込み、解消の必要性に言及した。
一時的に機運が高まったかに見えたが、以降は毎年の要望活動などにとどまり、新型コロナウイルスの感染拡大が重なり目新しい動きはない。地方で人口減に歯止めがかからない中、合区予備軍として福井や山梨、佐賀の例が挙がるなど拡大の恐れすらある。
自民は現在、18年の公選法改正で設置した比例代表の特定枠で、対象4県のうち候補者を立てられない県からも実質的な代表を確保するが、島根県の丸山達也知事は「(合区が増えれば特定枠の確保は)難しくなるだろう」と危惧する。
▽10増10減勧告
都市と地方の議員偏在は、衆院でも加速する。
16日には衆院選挙区画定審議会が岸田文雄首相に衆院選小選挙区の「10増10減」を勧告した。都道府県の人口比を反映する「アダムズ方式」が算出根拠となることから今後、東京をはじめとする都市への人口一極集中が是正されない限り拡大は続く。
現代政治分析を専門とする法政大大学院(東京都)の白鳥浩教授は「都市部に議員が集中すれば、地方の声はより届かなくなり、都市以外に住むことが不幸になるという考えになる」と批判。司法が1票の格差の根拠に憲法上の「法の下の平等」を掲げていることに対し「有権者の数だけで平等を測るのは、もはや適当ではない。地域事情など『質』を考慮する必要がある」と指摘する。
人口を基準とし、減る一方の地方の議員定数。白鳥教授は「(法の下の平等の)解釈そのものを早急に見直す必要がある」と提言する。抜本的改革を委ねられた国会の議論が低調なままでは、議員偏在に拍車がかかり、政治がより遠くなる。
(政経部・白築昂、片山大輔)