東京五輪まで3カ月のタイミングで新型コロナの感染が急拡大している。政府はきょう、東京、大阪など4都府県に3度目の緊急事態宣言の発令を決める予定だ。感染力が強い変異株の影響で、感染者の増加ペースが、これまでとは違うようだ▼数字が大きい大阪府や東京都の感染者数に目を奪われがちだが、地方への広がりが全国的に顕著なことを見逃してはいけない。「第4波」は当初、変異株が目立つ大阪府や兵庫県が中心だった。やがて東京都や愛知県などで感染者が増加。さらに21日の感染状況を見ると、新規感染者が1桁にとどまったのは47都道府県のうち鳥取、高知など6県だけだった▼鳥取県の場合、関西との往来が多く一足早く3月末から感染が拡大していたせいもあろう。ただ油断はできない。心配なのは島根県。21日、22日と、ここに来て連日の2桁感染を記録。しかも本土に比べ医療体制が手薄な離島、隠岐・海士町で連日、感染者が確認された▼人口約2200人の町の感染者計7人は、10万人当たりに換算すると300人を超え、大阪府や兵庫県の数値を上回る深刻さになる。それだけに医療のフォロー体制に万全を期したい▼人の流れに合わせ大都市から地方へと広がるウイルス。しかし人の往来を完全に遮断することはできない。そうだとすれば、行政は万一への備えを、市民は感染防止策をさらに徹底するしかない。(己)