任天堂(京都市)が発売した家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」が、7月15日で発売から39周年を迎えた。倉吉市鍛冶町1丁目の円形劇場くらよしフィギュアミュージアムにはファミコン本体と大量のゲームカセットが置かれ、来館者が自由に遊べるという。記念日を前に訪ねてみた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 

 ファミコンは1983年7月15日に発売された。本体の出荷は2003年に終了したが、現在は他機種のオンラインサービスを利用したり、復刻版を購入したりすることで当時のゲームの一部を楽しむことができる。ただ、当時のファミコン本体はいまだに中古が市場に出回り、ファミコンカセットの専門店もあり人気は根強い。

 円形劇場は現存する日本最古の円形校舎、旧明倫小学校を改修した3階建ての施設。約2千点のフィギュアやキャラクターグッズを展示するサブカルチャーの発信拠点として知られる。

特徴的な構造の円形劇場くらよしフィギュアミュージアム。フィギュアの展示や販売、制作体験のコーナーがある

 

 ▼年間パスで通う猛者も

 ファミコンは施設の3階にある。机にファミコン本体とテレビ、大量のカセットが並べられ、机の横にあるかごにはさらに多くのカセットが入れられている。

ファミコンとソフトが並ぶ机。通路に置かれているため、うまい人がプレイしているとギャラリーができるらしい
ファミコンのドットを思わせる注意書き。カセットフーフーや斜め挿しといった懐かしい単語も

 スーパーマリオブラザーズ、ドンキーコング、ロックマン、ドラゴンクエスト、グラディウスといった人気タイトルをはじめざっと見で100本以上はあり、かなりの品ぞろえだ。

 施設を運営する株式会社円形劇場の稲嶋正彦社長(65)によると、ファミコンは2018年のオープン当初、フィギュアを見に訪れる子どもに楽しんでもらい、親世代にはレトロ感を味わってもらおうと設置した。カセットは人気のタイトルを買いそろえる際にセットで付いてきたものが多く、全部でおよそ120本に上るという。

机の横にあるカゴにはさらに多くのカセットが入っている。子どもの頃にやったことがあるものが一つはありそう

 特に30~50代の来館者に人気で、土日には順番待ちができるほど。父親の方が夢中で遊び、子どもにプレーを自慢げに見せることもあるという。稲嶋社長は「アンケートで『ファミコンが楽しかった』と書く人は多く、人気のコーナー。中には年間パスポートを買って定期的にファミコンをしに来る人もいる」と笑った。

 ファミコンが流行した当時、遊んでいた世代の人が、懐かしさを感じてのめり込むようだ。

 

 ▼自称ゲーマー記者が挑戦

 記者(31)はファミコン世代よりも少し後だが、実機が家にあったため同じく懐かしさを感じた。試しにカセットを差し込んでスイッチを入れると、テレビ画面には横線が多数入った乱れた映像が映った。実機とカセットとの接触が悪いと起こる現象で、当時の子どもたちはカセットの端子部分に息を吹きかけたり、端子部分を磨いたりして対策したものだ。今や他機種では体験できない、実機ならではの懐かしく貴重な現象と言える。

ファミコンではおなじみの、縦線が入った画面。このままでもゲームは続けられるが、大体途中で動かなくなる

 稲嶋社長によると、人気のゲームはスーパーマリオブラザーズやテトリスのような有名作品に加え、エキサイトバイクといったレース系、ドラえもんやドラゴンボールといったアニメ系だという。せっかくなのでゲーマーを自称する記者がいくつか挑戦してみた。

 

 ★スーパーマリオブラザーズ

 ファミコンの名を世に知らしめた人気ゲームシリーズの一つで、今も新たな作品が出続けている。有名作品のため、実機以外でもいろいろな場面で遊べるため、一度はやったことがあるという人は多いのでは。

取材兼ゲームに没頭する記者。遊んでいる訳ではなく、あくまでも仕事のためである(稲嶋社長撮影)

 久しぶりだが1UPキノコやステージワープの位置も覚えており、無事にクリアできた。当時のゲームは操作性が独特なものが多かった中、マリオはジャンプ中の軌道修正がかなり効くという点が秀逸だった記憶がある。難易度もシンプルに難しく、爆発的な人気を誇ったことも納得のゲームだ。

ワープを駆使し、5分ほどでクリア。無限1UPなども試したかったが、時間の都合で諦めた 

 

 ★テトリス

ロシア発祥の有名ゲーム。ゲームセンターにあるアーケードゲームから家庭用のファミコンに移植された

 「落ち物パズル」と呼ばれるゲームの代名詞で、落ちてくるさまざまな形のブロックを横一列に並べて消していく。こちらもいろいろな媒体に移植されているため有名だ。

 ブロックを消していくにつれて落ちる速度が上がり、難しくなる。記者は高校生の頃に携帯電話のアプリでやりこんでいたが、ファミコンはアプリと異なる操作方法に慣れず早々に諦めた。近年はeスポーツでも人気のゲームで、めまぐるしい速度でブロックを消していく選手たちの技術は一見の価値あり。

落ちてくるブロックを積んで消してをひたすら繰り返す。ルールは単調なのにいつまでも飽きないから不思議だ

 

 ★スペランカー

スペランカーの主人公は自身の身長分落下するとミスになり「ゲーム史上最弱の主人公」とも呼ばれる。穴に落ちなければどんな高さからの落下でも耐えるマリオとは対照的だ

 勧められてはいないが、難易度が高いことで有名なゲームのため久々にやりたくなった。財宝を求めて洞窟を進むゲームだが、操作の難しさと、主人公が少しの段差ですぐに死ぬという仕様が難易度を跳ね上げている。

 操作ミスで落下を繰り返し、2回ゲームオーバーになったがなんとかクリアできた。当時は家庭用ゲームが今より格段に少なく、難易度の相場が定まっていなかった時代。最近のゲームに慣れた世代にとっては理不尽に思える難易度に挑戦できるのも、レトロゲームの魅力だ。

スペランカーのクリア画面。結局20分ほどかかった。大人でも手こずる難易度のゲームが当時の子どもにクリアできたのか、甚だ疑問だ

 

 仕事で訪れたつもりが必要以上にゲームに熱中し、つ...