日本はまたしても下位に沈んだ。世界経済フォーラムが発表した2022年版の「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で、男女平等の達成度順位は146カ国中116位だった。日本は下位の常連国となっているのである。

 分析の対象となった政治、経済、教育、健康の4分野のうち、教育と健康は男女平等をほぼ達成しているものの、政治は139位、経済は121位で突出して低い。政治は女性閣僚や女性議員の少なさが、経済は女性管理職の少なさや収入の男女格差が著しいことが、順位に反映されている。

 世界水準に照らせば、女性差別的な国家ということになる。国際評価の面でも、国の活力の面でも、損失は計り知れない。

 多様性が欠如した社会は、個々の人間の可能性を封じ込める。社会全体の発展も望めない。持続可能性についても、多くを期待できないだろう。

 だが問題の当事者ともいえる政界や経済界からは、この状況に対する危機感や焦燥感がほとんど伝わってこない。あまりに無自覚ではないか。

 7月の参院選は、女性候補が初めて3割を超えた。だが女性候補の比率が低い自民党が大勝した結果、当選者に占める女性の割合は28%にとどまった。それでも過去最高だという。

 候補者数の男女均等を求める「政治分野の男女共同参画推進法」が18年に施行されたが、十分効果を発揮しているとは言い難い。歩みが遅すぎて、世界からどんどん取り残されていく。

 経済の世界はどうか。22年版男女共同参画白書によれば、就業者に占める女性の割合は44・7%で、諸外国に比べ大きな開きはない。だが管理職に占める女性の割合は13・2%に過ぎず、賃金も男性を100とすると、女性は77・5と格差が大きい。

 家庭の状況を見ると、家事や育児、介護などに女性が費やす時間は男性の5倍超。この重い負担が女性の社会進出を阻む大きな要因になっている。表裏の関係なのだ。

 国会だけでなく、地方議会も、司法や行政も、地域の自治組織に至るまで、日本社会は男性がリーダーで、女性が従うという構図がある。

 強固な構図とそれを支える意識を変えるためには、制度改革によって歩みを進め、それを可視化する必要がある。その第一歩は、政治の世界で候補者などの一定比率を女性に割り当てる「クオータ制」を導入することだ。

 ところが、共同通信社が参院選後に実施した参院議員へのアンケートを党派別に見ると、クオータ制について自民は賛成がわずか4・6%、日本維新の会も6・7%にとどまる。公明は61・9%、立憲民主は84・6%、国民民主は60・0%。共産、れいわ新選組、社民も100%が賛成した。政権を担う自民党議員に、課題を直視するよう求めたい。

 女性議員が増えない理由の一つにハラスメントがある。同僚議員や官僚のセクハラ、パワハラ、票をちらつかせてのいわゆる「票ハラ」は極めて深刻だ。

 市民の側の意識変革も欠かせない。地方議員はどうか。会社の役員は? 町内会は? テレビに登場する人は? そこに女性は何割いるだろう。常に注視し、女性の参画を進める努力をしたい。私たち一人一人の本気度が問われている。