ホタルの幼虫を放流する市木地区の住民=島根県邑南町市木、八戸川
ホタルの幼虫を放流する市木地区の住民=島根県邑南町市木、八戸川

 島根県邑南町市木地区をゲンジホタルが飛び交う里にしようと、住民有志が繁殖と幼虫の放流に取り組んでいる。地区を流れる八戸川でかつて見られた蛍火の幻想的な光景を取り戻し、高齢化が進む地域のにぎわいにつなげたいと思い描く。2年目の今年は賛同の輪が広がり、幼虫1万匹を目指して今月末まで放流を続ける。

 60~80代の地区住民12人が集まり、昨年夏に取り組みを始めた。浜田市旭町で20年以上前からホタルを増やす活動を続ける榎本泰弘さんに指導を仰いだ。

 植木鉢を使って産卵床を作り、捕まえた雌と雄を一緒に飼育し、卵をふ化させて川に返す。昨年は幼虫6千匹以上を八戸川に放流した。メンバーの丸田金時さん(80)は、その成果として「昔ほどではないが、今年は相当飛んでいた」と手応えを感じた。

 2年目の今年は新たな仲間が5人加わり、繁殖をスタートさせた。雌を捕獲する際は木に止まっているより、草むらにいる個体の方が受精する確率が高いといった経験も生かし、昨年を上回る数の放流を目指す。各自の自宅でふ化させた幼虫は今月に入り随時、放流している。

 地区内ではスキー場の瑞穂ハイランドが夏営業を始め、通年での集客が期待される。いずれは夏場の利用客にホタルを楽しんでもらいたいと願う丸田さんは「地域の名物になればうれしい。屋台のイベントを開くなどして盛り上げたい」と話した。 (糸賀淳也)