「この先道路が狭くすれ違いできません。カーナビの案内にかかわらず、右折してください」―。島根県飯南町下来島で国道184号と飯石ふれあい農道の交差点に一風変わった案内標識がある。知らない道を走るのに役立つカーナビが、必ずしも「正解」に導いてくれるとは限らない。標識の先にはどんな道が続くのか。実際に車を走らせた。 (清山遼太)
飯南町野萱の国道54号から国道184号に入り、出雲市方面へ進むと、差し掛かる交差点に、この標識はある。出雲方面に向かうにはそのまま国道を直進するか、右折して農道と県道を経由するルートがある。どちらを通っても同町獅子で合流し、ともに道のりは約10キロ先で変わらない。
標識は、なぜ立てられたのか。2009年に立てた県雲南県土整備事務所によると、当時は国道を優先して選ぶカーナビが多く、案内に従った車が、国道の狭さに往生する事例が多発した。そこで、スムーズに走れる農道に、標識で誘導することにしたのだという。
どちらのルートもよく知る地元住民の藤原奈央さん(24)は「地元の人は狭いと知っているから国道を避ける。県外車がそのまま国道に入ってしまうのをよく見る」と証言する。
早速、標識付近でカーナビの目的地を出雲市の「出雲大社」に設定してみると、予想に反し、カーナビが示したルートは、標識と同じく農道経由だった。
この現象について、カー用品店・イエローハット松江店(松江市学園南2丁目)の店員、小山浩之さん(45)は「メーカーや開発時期によって示す道が異なるのではないか。地図のデータを入れる際、実際に現場で情報収集しているかどうかも分かれ目になると思う」と分析する。
二つのルートを走り比べた。まずは、国道。走り始めは、所々狭い箇所があるくらいで、走りにくい道とは感じない。ところが、7キロほど進むと、道幅は徐々に狭くなり、木々に囲まれ、昼間なのに薄暗い。急カーブが連続し、見通しも悪い。最も狭いところだと道幅が4・1メートルしかなく、すれ違いが困難な箇所も多数ある。合流地点まで所要時間は16分だった。
次に、農道経由。右折直後から2車線で直線区間も多く、見通しの良い道が続き、最後まで快適だった。所要時間は13分。早くて安全。こちらが「正解」だ。
カーナビに従わずに走った方が早くて安全というケースは決して珍しくない。同様な標識が増え、旅行客に快適に走ってもらう仕掛けが、地域の好印象にもつながりそうだ。















