岸田文雄首相(自民党総裁)の第2次改造内閣が発足した。首相は国民の「命と暮らし」を守り、政治への信頼を回復することこそが改造内閣の責務と自覚し、指導力を発揮してもらいたい。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員のつながりが疑念を生んでいるさなかである。内閣改造を批判の目くらましにする思惑があるとすれば許されない。

 山積する政策課題への対処と同時に首相が取り組まなければならないのは自民党政治と旧統一教会の関係をつまびらかにすることだと肝に銘じるべきだ。

 今回の内閣改造では、鈴木俊一財務相ら5人が留任し、河野太郎デジタル相ら5人が再入閣した。初入閣は9人だった。

 自民党四役人事も行われ、茂木敏充幹事長が続投する一方、残りの三役は横滑りを含め交代。政調会長には、旧統一教会側との接点が明らかになった前経済産業相の萩生田光一氏が就いた。

 7月の参院選を受けた内閣改造は、9月前半との見方が支配的だった。

 岸田首相は記者会見で、新型コロナウイルスの感染者急増や歯止めがかからない物価高騰に加え、緊迫化する台湾情勢などに対処する必要性を強調。「できるだけ早く新しい体制をスタートさせなければならないと考え続けてきた」と説明した。

 参院選に立候補せず民間人になった閣僚もいたため、早期の改造は避けられなかったといえる。ただ、首相が列挙した課題のうち、新型コロナや物価高の問題は改造前から有効な手だてを講じて収束の道筋をつけておくべきではなかったか。

 「危機管理の要諦は、常に最悪の事態を想定することだ」。首相はコロナ感染者の急増で医療逼迫(ひっぱく)を招いた菅内閣の反省からそう述べていたが、有言実行と評価はできまい。経済政策に関しては「成長の果実を国民一人一人に実感してもらう」と語っていたものの、国民の多くが経済成長も恩恵も感じていないのが現実だ。

 首相が就任して10カ月余り。この間の政策立案・遂行に落ち度はなかったか謙虚に検証する必要があろう。

 安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に、霊感商法などが指弾された旧統一教会側から選挙支援を受けるなどした自民党議員の存在が次々と明らかになった。その結果、内閣支持率が急落したため、岸田首相が内閣改造と自民党役員人事を急いだと受け止められてもやむを得まい。

 旧統一教会との関係について首相は「自ら点検し、厳正に見直してもらうことが新閣僚や党役員(起用)の前提となる」と表明した。当然の判断だ。

 自民党は所属国会議員に首相の意向を踏まえた通知を出したが、個人任せにせず党が前面に出て聞き取りなど徹底的な調査を行うべきではないか。その上で結果を公表し、関係の清算を図ることが疑念解消につながるはずだ。

 旧統一教会は下村博文文部科学相時代の2015年、世界平和統一家庭連合への教団名変更が認められた。当時の首相は安倍氏だった。

 安倍派所属の下村氏は関与を否定しているが、変更の目的や経緯には不透明な部分が指摘されている。行政の信頼性を左右する問題だ。行政府の長たる首相が主導して解明しなくてはならない。