新型コロナウイルス禍が幼児の体力低下にも影響を与えているとみられることが島根大地域包括ケア教育研究センターなどの調査で分かった。体力テストの記録をコロナ禍の前後で比べ、体の動きなどが日常生活では力が付けにくい「投てき」で低下が目立った。外遊びが減り、運動不足の傾向が強まる中、意識的に運動機会を設ける必要性を指摘している。 (中島諒)
子どもの体力に与えるコロナ禍の影響を巡っては、スポーツ庁が全国の児童生徒対象の体力測定結果を基に体力低下を指摘しているが、幼児対象の全国的な測定は行われていない。
島根大地域包括ケア教育研究センターの安部孝文助教(教育学)は、身体教育医学研究所うんなん(雲南市加茂町)と共同で、雲南市の3~5歳児608人を対象にソフトボール投げ、25メートル走、立ち幅跳びの3種目で測定した。
市が幼児期の運動能力養成を目指し毎年測定してしているデータを使い、コロナ前(2019年秋)とコロナ後(20年秋)の記録の中央値を比較。ソフトボール投げで3歳児は3・0メートルから2・5メートル、4歳児は5・0メートルから4・0メートル、5歳児は6・3メートルから5・0メートルといずれも下がった。21年の概算値でも、記録の低下がみられるという。
他の2種目(25メートル走、立ち幅跳び)は目立った変化がなかった。
安部助教はボール投げについて、「走る」「跳ぶ」の2種目と比べ、体の動きを細かに調整する能力が問われると分析。幼児の日常生活の動きでは身に付けるのが難しい力で「コロナ禍で道具を使った遊びが避けられる傾向が影響した可能性がある」と指摘する。
また、幼児期の運動不足はその後の運動嫌いにつながる恐れがあり、成人後の体力不足や健康状態の悪化との相関があると考えられるとし、「1日1時間以上の運動遊びをするのが望ましい。保護者は子どもと積極的に外遊びしてほしい」と呼びかける。