東シナ海に浮かぶ沖縄県尖閣諸島と台湾は170キロほどしか離れていない。松江市と益田市との距離とほぼ同じで、国境を挟むような位置関係にある。その台湾を6年以内に中国が侵攻する可能性がある、と米国のインド太平洋軍司令官が先月、議会で証言した。台湾有事が尖閣にどう影響するのか、日本の安全保障にとって人ごとでは済まされなくなってきた▼尖閣を巻き込みながら海洋進出を加速させる中国は、統一を目指す台湾を意識した軍事力を格段に強化。台湾を射程に収める短距離弾道ミサイルは四半世紀前の最大30倍を保有し、米空母の進出を阻止する中距離弾道ミサイルの配備拡充も進める▼米中対立が激化する中、先ごろ公表した日米首脳会談の共同声明で台湾について52年ぶりに言及した。中国の神経を逆なでしないよう、慎重な物言いに腐心してきた台湾海峡の安全の重要性をうたう▼「偉そうな態度で他国に干渉しては、人心を得られない」。中国の習近平国家主席が国際会議でこんな発言をした。名指しはしなかったものの、「これだけ言えば分かるだろう」と、暗に米国をけん制した▼これに対し、あちら(中国)は専制主義、わが方は民主主義リーダーを自任するバイデン米大統領は「彼(習主席)には民主主義のかけらもない」と負けてない。台湾の安全は尖閣の安定と陸続き。両大国の頭領同士の口げんかにハラハラする。(前)