文化財を生かした観光やまちづくりについて意見を述べる登壇者=大田市大田町、市民会館
文化財を生かした観光やまちづくりについて意見を述べる登壇者=大田市大田町、市民会館

 石見銀山遺跡の世界遺産登録15周年フォーラムが4日、大田市大田町の市民会館であり、観光と文化財保護の両立や官民連携の可能性を探る鼎談(ていだん)などを通し、銀山を核とした地域活性化や、遺跡を守り生かす方策を考えた。

 鼎談は島根県立大地域政策学部の久保田典男教授(地域産業政策論)や、大田市大森、温泉津両町と同様に国の重要伝統的建造物群保存地区がある岡山県津山市の担当者2人が登壇。NPO法人石見銀山協働会議の中村唯史理事長が進めた。

 地域資源を生かした観光やまちづくりに取り組む際の課題となる文化財保護との折り合いについて津山市の担当者は、市指定重要文化財の旧銀行をアートギャラリーに活用する事例を紹介し「文化財個々の本質的な価値を損ねなければ改修は自由だ」と説明した。

 久保田教授は観光のあり方が画一的なものから多様なニーズに対応する時代に変化しているとし、地域住民が移住者らを温かく受け入れる大森町の強みを生かして「観光客と地域住民が交流し、『その人だけ』『ここだけ』という観光サービスを提供できるかが鍵だ」と訴えた。

 講演会では、中村理事長が世界遺産登録から15年の歩みを話した。中核地域の大森町や、積み出し港として栄えた温泉津町の住民が積極的に活動する一方で、他地域との温度差を課題に挙げ、銀山を守り生かすことが市や県全体の未来づくりにつながると強調した。

 石見銀山協働会議と大田市教育委員会が主催し、50人が参加した。