感染対策を徹底しながら練習に励む会員ー松江市片原町
感染対策を徹底しながら練習に励む会員ー松江市片原町

 松江市の秋の風物詩・鼕(どう)行列が16日、3年ぶりに開催される。新型コロナウイルス感染拡大で静けさがあった中心市街地の夜は10月以降、練習の鼕の音が鳴り響いている。各団体は伝統行事を継続させるため、オリジナルマスクを用意したり、練習回数を減らしたりするなど工夫を重ね、本番に備えている。(井上雅子)

 「ドン、ドン、ドンドンドン」

 秋風が心地よい5日午後8時、ライトアップされた国宝・松江城が見える幸橋(松江市片原町)の上で、東片原町内会でつくる「東片原町鼕保存会」の鼕の音が響き始めた。笛の音も重なり、一体感ある演奏が地区全体を包む。3年ぶりに鼕をたたいた松崎治郎会長(56)は「体が覚えている」と満足げに笑った。

 町内会はドーナツ化現象で住民が減る中、伝統を絶やすまいと町外の住民と縁をつくるなど試行錯誤しながら鼕行列の参加を続けてきた。そんなさなかにコロナ禍に直面。行事は2020年に中止、21年にはデルタ株が猛威を振るい、開催1カ月前に取りやめとなった。松崎会長は「出るつもりで準備をしていたが」と無念さを振り返る。

 今年の鼕行列は現時点、14団体が参加する見込み。コロナ禍で希薄化が懸念される住民の結束を取り戻すためにも、各地区が「今年こそは」と熱を込め、準備を進める。

 念を入れるのがコロナ対策だ。東片原は練習時間を休憩も含めて90分間と定め、飲食や歓談を禁止。笛からの飛沫(ひまつ)を抑制しながら、音の響きにも支障が出にくい笛マスクも作った。

 「町内会全体が待ち望んだ祭り。やっと出られる」と話すのは同市雑賀町の雑賀3区の町内会でつくる「雑賀津田街道」の茶谷高史会長(73)だ。前夜祭に約40人で鼕を出す予定で、密を避けてのパート練習を始めた。全体での合同練習は1日に絞り、本番に臨む。

 鼕行列の中止が続く期間中、茶谷会長は「祭りの存在が人のつながりや街の活気を生む」と改めてかみしめたという。「祭りを続けることは大前提。慎重にコロナ対策をし、最善を尽くす」と当日を心待ちにする。

 鼕行列は16日午後1時半から松江城周辺などで行われる。前日の15日には、松江城とJR松江駅北口で前夜祭がある。