全校生徒8人の大田市立第三中学校(大田市水上町)で今春、1年生部員1人による弓道部ができた。昨年の柔道部に続く創部で、多様なニーズに応えようと生徒の思いをかなえた。学校周辺の事業所や住民も、次々と弓道関係の資材を提供して協力。人口減に伴い加速する部の廃止の動きとは逆行するように、地域で育む「三中愛」で競技環境を整えた。 (曽田元気)
大田三中には現在、柔道部、卓球部がある一方、1人が巧みに複数の楽器を持ち替える演奏で有名になった吹奏楽部は休部中だ。
弓道部員の福谷颯介さん(13)は小学生の頃、先輩のりりしい姿を見て競技に憧れた。そんな気持ちを知った同校が校区内の住民でつくる教育後援会に相談したところ、弓道場の整備に必要な屋根材や砂など、ほぼ全ての資材を出してもらえることになった。校内に弓道経験者の芦田美紀教諭がいることも、創部を後押しした。
教育後援会前会長で協力者の1人の木曽重美さん(65)は「たった1人だけど今いる子どもの気持ちをくんで応援したかった」と地域の思いを代弁する。小谷明浩校長は「想定以上の支援をいただき、地域の三中愛を感じた」と感謝しきりだ。
練習では福谷さんと芦田教諭が並んで道場に立ち、大田市弓友会の山本修三会長(75)に指導を受け、集中して28メートル先の的に狙いを定める。
15日は地域への感謝の気持ちを込めたお披露目式が開かれる。福谷さんは「地域の人に部をつくってもらい、ありがたい。大会で優勝できるようになりたい」と成長を誓いながら「1人は集中できるがさみしさもある。新入生に入部してほしい」と望んだ。