新型コロナウイルスの感染拡大で制限されていたインバウンド(訪日客)の個人旅行が解禁され、山陰両県の自治体が誘客に再び力を入れている。海外で市長自らが売り込むトップセールスを計画し、海外と山陰を空で結ぶ国際定期路線の運航再開に向けた活動を強化。全国で誘致合戦の激化が予想される中、アピールに熱を込める。
「トップセールスを含め、インバウンド需要を引きつける取り組みをやっていく」。14日の定例会見で松江市の上定昭仁市長が意気込んだ。
市観光動態調査によると、2021年の延べ外国人宿泊客数は1047人。新型コロナによる入国制限の影響を受け、コロナ禍前の19年の7万8781人を大きく下回った。
市は八束町特産のボタンが輸出される台湾を特に重視。上定市長は出雲、安来、米子、境港を含めた5市などで組織する中海・宍道湖・大山圏域市長会の枠組みで20日に訪台し、台北市と観光誘客など交流促進に関する覚書を締結する。
上定市長は同じくボタンが輸出されたフランスや、松江ゆかりの文豪・小泉八雲が幼少期を過ごしたアイルランドにも注目。松江に対して一定の認知がある国で重点的に売り込む考えで「インバウンドが盛り返してきた時にあまたある地方で、松江が選ばれるストーリを作っておかなければならない」と強調する。
山陰両県の訪日客の多くは韓国や中国といった周辺国が占めるため、鳥取県は米子空港(境港市佐斐神町)とソウル、上海、香港を結ぶ国際定期路線の復活を待望する。ソウル便は日韓関係の悪化で19年10月から、残る2路線は新型コロナの影響で20年2月からそれぞれ運休が続く。
県は担当課長レベルでオンラインを活用しながら航空会社への働きかけを強化。並行して運航再開に欠かせない検疫など受け入れ体制の構築を国や空港ビルと協議し、県国際観光誘客課の瀬良知紀課長補佐は「復活が訪日客を増やす一番の手段で、取り組みに力を入れる」と話した。