昭和の昔、お金を払わなくても、子どもがただで漫画を読めるスポットがあった。理髪店だ。週刊の少年雑誌が一通りそろえてあり、髪を刈ってもらいながら、ジャンプやマガジン、サンデーやチャンピオンに読みふけった。

 書店もおおらかだった。新刊のコミックはビニール包装されることはなく、店頭で読めた。例えば松江市の中心市街地には北から南まで何軒も店があり、小遣いの少ない子どもでも、各店を渡り歩けば話題の漫画をほぼ読み通せた。

 本屋と理髪店のおかげだ。故水島新司さんの名作「ドカベン」の物語はすべて頭の中にあった。週刊誌連載の「人造人間キカイダー」や「デビルマン」は、...