真夜中、ふと目覚めると、宿泊地に張ったテントの外側に、蚊の大群が張り付いていた。窓の網目をすり抜けて入ろうと、全力でもがく。南アフリカに向かう旅の途中、ザンビアでの経験だ。

 マラリアなどの感染症を媒介し、世界で最も人を殺す生物は蚊だとされる。「実験に使う蚊とは凶暴さが違う。刺されたら病気になるかも」。昆虫分野で第一線を走ってきた生命科学研究者の仲川喬雄(46)は感染症の怖さを初めて実感...