浜田市内の木工所で10年間修業を積んだ沖原昌樹さん(38)=山口県柳井市出身=が独立し、木工作家として新たな一歩を踏み出した。北欧家具に憧れ、テーブルや小物を生み出している。アトリエを構えたのは木々に囲まれた同市の山間部・弥栄町。商品販売だけでなく、木工教室を開き、木の風合いやぬくもりの魅力を発信していく。 (白築昂)
同町内の県西部山村振興財団の作業所。一角にあるガレージで沖原さんが海外製の専用機材を使い、黙々と木を成形している。木くずが舞い、ガレージ内には木の香りが漂う。
いま進めているのは、分解して持ち運びができるアウトドアテーブルや寝室で使うナイトテーブル、ランプシェードの商品化だ。市内の山で育ったナラや用途に応じて世界各地の木材を使う。木目や色合いを生かし「機能的な物を作りたい」と試行錯誤が続く。
春までは組子細工で有名な同市三隅町の「吉原木工所」で勤務していた。岐阜県内の木工職人養成所での研修や青年海外協力隊の活動を経て2012年に入社。ここ数年はグループリーダーを任されるなど、中心的役割を担ってきた。
技術に自信が付き「いずれ独立を」という夢を5月にかなえた。屋号は「ハーベンウッドワークス」。ハーベンはフィンランド語でヘラジカを意味する。大学時代に興味を持ち、木工に携わるきっかけになった北欧家具にまつわる言葉を自身の「原点」に掲げる。
財団の敷地内で使われていなかった小屋を改修し、商談や展示場、木工教室の場として使用。1週間のうち3日は財団のパート職員として工場内で勤務し、残り4日で作家活動に励む。
商品開発と平行し、今後は小学生から大人までを対象にした木工教室を開く計画だ。「刃物を使って木を削ると、木くずが舞い、良い香りも漂う。目、耳、鼻など五感で味わえる場を作りたい」と話している。