「右よし、左よし」-。江津市桜江町の小笠原修造さん(81)はハンドルを握ると、必ず指さし確認するという。「車の運転中は大きな動作で身ぶり手ぶりはできませんが、ハンドルを握っていても指一本動かすことは十分可能。長年無事故を続けてこられたのも、これを続けてきたのが要因」▼先日、松江市内で開かれた交通安全高齢者の主張島根県大会に顔を出した。小笠原さんが口にしたのが、公共交通機関が乏しい地方の苦悩だ。「免許証を返納して車の運転ができなくなると、買い物や病院への通院ができず生活が困難になる」▼自動運転の技術が進んできたとはいえ、公道での実用化はまだまだ先。ならば、ドライバー自身の意識改革が求められそうだ▼県知事賞に選ばれた松江市玉湯町の犬山正博さん(70)は、高齢ドライバーの免許更新の制度が改正されるのを受け、同世代の知人が交通規則を学び直したエピソードを紹介。その上、長い人生で蓄えた気付きや判断力といった〝交通安全力〟をより高めていこうと呼びかけた。冒頭の指さし確認にも共通する考えである▼11日から20日までは島根県の「高齢者の交通事故防止運動」期間。9月末時点で県内の交通事故死者13人のうち9人が高齢者という。加齢による体力や判断力の低下は、いずれ誰にも訪れる。交通事故ゼロへ向けて、高齢者だけでなく「予備軍」も交通安全力を磨きたい。(健)