かつて本紙連載コラム『森と語る』の執筆をお願いしたアウトドアライターの天野礼子さん(72)に誘われ、島根県吉賀町を訪ねた。地元の有機野菜が並ぶ「道の駅かきのきむら」で面白い商品を見つけた。名前は「神楽茶」。煎茶に和紅茶、ほうじ茶…。農薬や化学肥料は一切使わず、地元の草木を堆肥にした循環型農法で育てたお茶だ。
生産者の上原美奈子さん(66)の経歴も面白い。神奈川県で30代で茶道を始め、煎茶道の師範、日本茶インストラクターとして活動するうち自分でお茶を作りたくなり、生産者に転じた。
ところが、手がけていた同県清川村の茶畑が福島第1原発事故の影響でセシウムに汚染された。悩んでいた頃、吉賀町の有機茶園が後継者を探していると知り、2016年に移住。近隣の山や裏庭にある茶葉を摘み、自家用のお茶を飲んでいる家庭が多く残ることも魅力的に映ったそうだ。
上原さんは茶園から車で40分ほど離れた場所で米作りも始めた。無農薬のわらを作り、茶畑の肥料にするのが目的。「あなたのお茶はもっとうまくできるはず」という天野さんの期待に応じた。茶作りのこだわりは相当なものだ。
神楽茶は、茶畑の持ち主が地元の神楽社中を率いていたことから名付けた。「神楽と人と農の関係性を、お茶と共に伝えたい」と上原さん。道の駅で買った和紅茶は、関係者の思いと期待がこもった優しく甘い味がした。(健)













