円安・物価高と2023年の日本経済
GDPコロナ前の水準に
山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が24、25日、松江、米子各市であった。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏(51)が「円安・物価高と2023年の日本経済」と題して講演。世界経済が悪化する一方、日本は底堅いと強調した。要旨を紹介する。
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経済の各指標から米国を中心とした海外経済の悪化の前兆が読み取れる。米国は歴史上、長短金利差がマイナスになると必ず直後に景気が後退。大きなマイナス値が出た後の来年以降、ほぼ確実に後退するだろう。パンデミックと戦争が重なり、40年来のインフレ水準となったためだ。
原油先物価格とドル円相場には相関があり、推移から今後の動きがある程度推測できる。今夏に原油安となったため、年内にドル高円安がピークアウトする可能性がある。
日本の貿易赤字は縮小の兆しを見せ、10月には新型コロナウイルス感染拡大の水際対策が緩和された。インバウンド(訪日客)が増え、円の需要は高まるだろう。これまでドル高円安が顕著になった理由の一つが日銀の積極的な金融緩和だが、その日銀のトップを含む布陣は来春任期を迎える。政策修正に前向きな人事への期待が集まる。
こうした情勢の下、日本の実質国内総生産(GDP)は23年にコロナ前の水準に戻るはずだ。
円安で、日本の製品はもっと利益が出るはずだったが、そもそも半導体などの部品不足で製造ができなかった。世界経済の悪化で物が余り始め、部品の調達ができるようになる。
サービス消費は回復基調。コロナ前と比べ10兆円足りないが、対応次第で需要拡大の伸び代を残す。
意外にも設備投資は過去最高の伸びを見せる。脱炭素などのグリーン化や、デジタル化、レジリエンス(回復力)の強化などで増える。世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)の工場を造る熊本県の動きが波及し、地方経済発展の起爆剤となる生産拠点が各地にできるといい。
(奥原祥平)